法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『くじびき♥アンバランス』をようやく消化

mattune氏のエントリ*1を見て、買ったまま後回しにしていたDVDをようやく全話視聴。DVDBOX付属の『げんしけん』は未視聴。亜細亜堂制作らしく、作画も演出も古典的に安定して見所があるアニメだった。
面白かったのが、典型的な萌えアニメとして設定された作中作のスピンアウトというのに、全体のトーンが驚くほど抑えられていて、特殊な設定の学園アニメとして落ち着いて楽しめたこと。ありきたりで誇張が激しい設定の寄せ集めでも、最終的に画面で立ち現われるのは「ツンデレ」や「素直クール」といったテンプレートに収まりきれない人物像ばかり。


いわれてみれば、たしかに八谷賢一コンテ回は緊張感があって面白い。しかし作品全体がわりと統一されていたので、先に注意されていないと気づけなかったかも。
あと、担当した2回は話運び自体も面白く、やや主人公少年と距離のある位置で作られる少女同士の関係性とか、心のあわい表面にたつ波をとらえようとする態度とか、少女漫画の良さを萌えアニメの文脈に落としこもうとしている感覚があった。


日本人の文化って本当に「空気を読む」なんだな - まっつねのアニメとか作画とか
正直にいって、あまり最近に演出で話題となる作品を見ていない。おまけに今さら『佐武と市捕物控』を見始めて、斬新と思っていた演出いくつかが過去に試されていたことを知って悩んだりしている。
あと、『少女革命ウテナ』演出家の錦織博監督が同時期に監督した『忘却の旋律』と『かいけつゾロリ』、ローテ演出家の評価では前者が高いだろうが*2、演出家の熱意や競争は後者が激しいと感じる。尖った演出というものは、けっこう時代性というか、ある種の奇跡に支えられる面が多いのではないかなと感じる。熱を持った作品に参加すれば、他では今一つに感じられる制作者もいい仕事をすることがよくある。
あと、主にロボットアニメ中心に視聴しているから、主張の強い演出はロボットという主張の強いガジェットと衝突しやすいと感じることが多い。『忘却の旋律』が『少女革命ウテナ』と比べて格段に演出力が落ちていると感じた一因だろうと思う。
以前のエントリで巧すぎないコンテマンを並べたのは、以上のような個人的な事情もあった。

*1:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20090618/1245343796

*2:増井壮一大畑清隆、等々のコンテマンが名を連ねる。連続エピソードを一人の演出家が担当する演出方針も面白くはあった。