法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『トレーニング・デイ』

デンゼル・ワシントンは本当に芸達者〜
2001年の映画。暴力と犯罪がはびこる街へ着任した主人公ジェイク・ホイト*1が、デンゼル・ワシントン*2演じるベテラン刑事アロンゾ・ハリスと仕事をともにして、警察の現実を教え込まれる。
青臭い正義感をただよわせる主人公に対し、悪と対峙するためには自らも悪に染まる必要があることを語るデンゼル・ワシントン。潜入捜査の際に演技するためという説明には、なるほどと思える説得力がある。生まれ育った黒人街に対するデンゼル・ワシントンのひねくれた愛情も印象的だ。
デンゼル・ワシントンの破天荒な存在に主人公は驚きつつ、どこか引かれていく。そして短期間で街の現実を嫌というほど知らされ、体験させられた主人公は……


境界線からはみだしていく人々を、下街の一断片として映し出す作品。
ジャンルは一般的なバディ物であり、ハードボイルドであるが、最終的にはその種のジャンルに対する批評的な結末を迎える。ほんのわずか匙加減を変えるだけで、あるいは長期シリーズで物語るべき展開を短時間で見せるだけで、典型的な人物像が全く異なった様相を見せる。
そして、アロンゾ刑事の後を主人公も追うかもしれないと予感させる終幕。映画の描いた風景が、けして特異な人物による特異な出来事ではないと思わせる。悪と対決する誰もが経験するかもしれない、普遍性あるテーマがここにある。


社会派的非アクション映画らしい見所が多く、娯楽作品としても楽しめる。様々な舞台で銃撃戦から格闘戦まである。テーマの関係でカタルシスこそ薄いが、クライマックスの対決は矮小な経緯で泥臭く戦い、奇妙に現実味あった。
主人公の青臭い正義感で一つの障害が突破できた展開も、重苦しい描写が続いただけに胸を打つ爽快感があった。

*1:演じるのはイーサン・ホーク

*2:この映画でアカデミー賞主演男優賞を受賞したが、主人公ではないと思う。