松本理恵が演出を担当。伏し目や白い歯を見せる表情が特徴的。増えすぎたキャラクターを一画面に入れるため、近景と遠景に配置したキャラクターが会話するような、アニメならではの技巧も目立った。
アバンタイトルのホラー演出、敵幹部が資料を盗み見ようとする場面の緊迫感も悪くない。敵から発射される巨大コインを足がかりに、プリキュアが宙を走るようなアクションのアイデアもいい。
作画監督は奥山美佳。コンテの高い要求に、作画もよく応えていた。シンプルで迷いのない線で描かれたキャラクターが、活き活きと崩した表情を見せる。フィリピンアニメーターの、空間を広く取り、動きの情報量が多いアクションも見ていて楽しい。
物語は、何度か言及されたフローラからの手紙で謎かけしつつ、王達が集合してキュアローズガーデンへの扉が開く。
わかりやすい話の本筋に多彩なキャラクターがからむ。それでいて敵幹部内の秘密や目的の不確かさなど適度な引っかかりが各所にある。教科書的な展開だった。
ただ、手紙の中身といいキュアローズガーデンといい、シロップ一人が因縁を背負っている作劇には、少しばかり疑問が残った。
そもそも前作から続いて登場するプリキュア達は今作中盤くらいでキャラクターとして成長を終えてしまい、葛藤したり悩んだりするドラマは今作で新登場した少年キャラクターばかりが担当。あまりバランスが良い構成とは思えない。
プリキュアシリーズということを忘れて、少年が主人公の物語と考えれば、一本の筋が通った展開で、けして悪くないのだが。