法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『大みそかドラえもん さらばネズミ年!来年はモ〜30周年だよスペシャル』ゆうれい城へひっこし/野比家が無重力/ネズミが去るまであと4時間

年末恒例の大晦日SP。今年は中編2作に短編1作が新作、1時間近くのSP作品「地底の国探検」再放送はCMをほとんどはさまず。
個々の作品を繋ぐブリッジパートは工夫が少なくて手抜き感ただよっていたが、満足度の高い中身だった。


「ゆうれい城へひっこし」は渡辺歩コンテ。ミュンヒハウゼン城の広さ、古めかしさの演出*1は流石。原作では言語くらいだった外国描写に対し、風景や食事の描写で楽しく異国情緒ある場面を作っていた。
しかし、陰影を強調した原作と違い、恐怖感を煽る画はほとんどない。逆に、原作にはなかったスネ夫しずかジャイアンの出番を作るため、コメディ場面ばかり足していた。渡辺歩が担当したアニメで過剰コメディ演出はよくあることとはいえ……。「※特殊カメラの映像」という字幕テロップを利用し、しずちゃんの変顔で笑わせる実験的な演出には感動すらおぼえたが、やりすぎの感が強い。
原作では亡霊がトリックと推察しつつ、それでも恐いというホラーサスペンスだったのだが、アニメは全く雰囲気が違っていた。あと、中盤でCMが2〜3分ごとに何度も入ったことも困った。
野比家が無重力」は、おおむね原作通り。無重力になったからといって、力を加えないと浮かびあがったりはしないという慣性描写が良かった。
「ネズミが去るまであと4時間」は傑作。よりによって、原作で最も暴力的なスラップスティックコメディを、ネズミ年の終了に合わせてアレンジしつつ、年間最後の放送にあてたこと自体が大笑い。
秘密道具のデザインは玩具っぽくアレンジされたが、ビーム兵器となったことで壁を貫通して周辺も危険にさらし、野比家にまで甚大な被害をおよぼす。
壁を貫通したビームを活用して戦場を立体的に描写したり*2ドラえもんが階段の角で敵の位置を探ろうとする時に潜望鏡を使ったり、戦闘の演出がとにかく細かい。廊下の先、敵が居そうな怪しげな部屋*3で古い蛍光燈が明滅している場面など、下手なアクションアニメより緊迫感があった。
銃貫通痕から夜空へ光が漏れてイルミネーションのような野比家を引いて映しつつ、悲惨な大晦日を迎えるのび太達の愚痴で終わらせる結末も見事。オリジナルの良さを引き出していた。


他、心に残る30話募集の中間発表がされ、さすがにどれも記憶に残る名品ばかりだったが、8歳以下の部門では近年のSP*4が目立っていた。
漠然と記憶に残る作品を挙げていくと、やはり長編作品に偏ってしまうのか。

*1:生活するためには使い勝手が悪いことを表現するために必要な演出。

*2:コードギアス反逆のルルーシュR2』の似たような戦闘回よりも巧いとすら感じた

*3:まあ、いつもの台所だが。

*4:もちろんアニメオリジナルストーリー。良いスタッフで手間をかけて作られ、出来自体は良いものが多いが。