法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『マンガ「人権」弁護士』司法公論会原作

巻末の主要参考文献に、マンガ本や東中野修道の著作が並んでいるのは、いったい何の冗談だ。
まだしも、『ゴーマニズム宣言』シリーズは、オウム真理教裁判に関わる一次資料として半分フィクションなりに使えるだろう。だが『嫌韓流』シリーズは、誤謬にまみれた二次資料三次資料の類いにすぎない。マンガ中で直接言及しているわけでもなければ出版社も異なっており、参考文献にあげる意図が全くわからない。


精読する気がなくなったので*1、題名だけの感想を書いておく。
よく「人権派弁護士」という言葉を蔑称のように使う人がいるのだが、逆に論理的数学者*2とか科学的物理学者とかいう呼称を批判に使ったりするのだろうか。人権派弁護士という自称を皮肉っているつもりなら的外れだし*3、人権だけでは弁護士は務まらないというなら数学者や物理学者にも直感や感性が求められる局面はある。
論理や科学に価値があるとは思っていても、人権には価値を感じられない、そういうことだろうか。

*1:台詞が長すぎてマンガとして破綻している上、敵役の弁護士が安っぽい作り。途中で考えを変える死刑反対論者も主張が浅く、藁人形論法にしかなっていない。とりあえず光市母子殺害事件に言及した部分を集中して読んだが、出版当時に誤謬と明らかになった現弁護人の裁判遅延意図説を主張したり、量刑に納得していても事実関係で争うのが当然と主張したり、正気を疑う記述ばかり。法曹実務家が原作集団の一人と称しているが、どこまで信じていいものか。

*2:おお、まるで森博嗣作品の題名みたいだ。

*3:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20071220/1198194976で皮肉ったように、わざわざ人権派を自称する弁護士自体が少ない。論理的と自称する数学者が少ないように。