法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

東中野修道氏に寄せられる支援の声・高裁

夏淑琴氏が東中野修道*1名誉毀損で訴えていた裁判。高裁で原告被告双方の控訴を破棄。地裁判決をほぼ全面的に踏襲し、実質的な原告完全勝利だったという。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080522k0000m040101000c.html

 南京虐殺(1937年)の生存者、夏淑琴さん(79)が書籍で「偽の被害者」と指摘されたとして、著者らに1500万円の賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。柳田幸三裁判長は著者の東中野修道亜細亜大教授と出版元の展転社(東京都)に400万円の支払いを命じた1審・東京地裁判決(07年11月)を支持し、双方の控訴を棄却した。

 夏さんは、米国人牧師が南京の状況を記録した資料に「8歳の少女」として登場し、戦後は証言活動を続けている。東中野教授は98年出版の「『南京虐殺』の徹底検証」に「『8歳の少女』は夏さんとは別人。夏さんは事実を語るべきだ」と記していた。柳田裁判長は「指摘が真実との証明はなく、夏さんの名誉感情を著しく侵害した」と判断した。

 展転社は「不当判決だ。上告の方向で検討している」とコメントした。夏さんは「今日の勝訴は大変感動しました。被告が上告した場合、最後まで闘う」と話している。【銭場裕司】

毎日新聞 2008年5月21日 21時49分

大手報道機関の記事は簡単な内容ばかりで、くわしい経過はわからない。
この点で、二審判決直前のJANJAN記事が、写真付きでくわしく被告控訴内容の筋悪さや、裁判所周辺の空気まで伝えている。

気になった箇所を抜粋引用する。

 被告側代理人中島弁護士は、第一に本件事件の「実行犯が日本軍であるというのは冤罪である」と語り「ほぼ立証可能なレベルに研究が達した」と明言した。理由は当時「中国の警察が避難命令を出しており住民が数十万が避難し」たあとであり、南京地区に「残った者は国民党軍が射殺・銃殺した」からである。その後「証拠は残っていないので、推測するほかありませんが」と付け加えた。第二に「マギーフィルムは創作である。現場で写されなかったという証拠がある」と語った。 

 裁判長が一瞬顔をあげ宙に目をやりキョロキョロさせた。  

第一の主張は、少女が別人かという争点を忘れて、南京事件否定のためにした主張と告白しているに等しいのではないか。
さらに第二で自著の論拠を「創作である」と主張し始めては、さぞかし裁判長も驚いたことだろう。

 集会に参加したテレーシア氏はドイツのハレ大学博士課程在学の日本学専攻だ。「東中野の英語本が大学の図書館にあった。見るととても高価。彼は世界中の大学に寄贈しているらしい」と語る。彼女は「日本の運動が小さく分裂しているのに驚いた。ドイツだとひとつでやっているから」と語る。 

ここでいう「運動」は歴史修正主義側のことだろうか。この記事だけでは文意がよくわからない。

 私は昨年来日した夏氏が「本人と直接会いたい」と言っていたことを思い出した。「7年間も南京で裁判を続けてきました。これまで東中野氏本人は1度も法廷に来ていない」そのことに不満を持っている、と。本人が生存し南京事件の被害について今も語りつづけているにもかかわらず、それが無視され、根拠無くニセモノだという著作が本屋に山積みされている日本社会の恐ろしさを改めて思った。 

言うまでもないが、判決が出る時さえ東中野氏は出席しなかった。


例によって2ちゃんねるニュース速報+板から発言を一つ。スレッド全体では、長い時間をかけてネットで議論が蓄積されたおかげで、そう極端に駄目な意見ばかりというわけではないが。
【裁判】南京虐殺:名誉棄損2審も賠償認める。出版元側敗訴…東京高裁[5/21]

16 :名無しさん@八周年:2008/05/21(水) 22:30:19 id:hn5HoIsH0
俺は中国人のうそには勝てないと思うな、特に裁判では。
 まあ、裁判員なら夏は殴り殺されるだろうが。

地裁判決の時もだったが*2、なぜこういう発言で傷を広げようとするのだろうか。
そもそも民事のこういう事件に裁判員が関わることはないと思うが、感情的に吹き上がった発言を見る度に裁判員制度が無茶と思えてくる。]

*1:思想史の専門家であり、日本や中国の近現代専門家ではない。

*2:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20071105/1194307516