法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

もちろん誰だって他人から馬鹿にされたくない

光市母子殺害報道を通して一つの傾向を感じたので、まとまらないまま書いておく。


http://d.hatena.ne.jp/pbh/20080423/1208912849*1

 これ、本村氏に対して失礼と言うよりも、司法制度に対して失礼だよな。裁判官が世論に流されてこの判決にしたとでも思っているのだろうか。判例主義ではない判断に対して後々これが判例になって死刑乱発される!とか思ってんのかしら?馬鹿にしてる!この電波記者には今後も「人権派新聞記者」として活躍して欲しいDEATHネ(´ー`)

本村洋氏自身が極刑を求める発言や主張をくりかえし、社会活動を行っていたのに*2、その感想を求めることがどのように失礼なのだろうか。裁判官が本村氏の影響を全く受けていないなどと無根拠に主張しては、それこそ本村氏へ失礼なのではないか。
判例主義ではない判断に対して後々これが判例になって」という箇所も何を主張したいのかわからない。どのような判決でも基本的には新たな判例となり、今後の裁判に影響を与える*3。本村氏も形式的に「ハードルが下がる」ことを否定しつつ、実質的に新たな判例として今後に影響を与えるだろうと、おそらくは意識せず認めている*4


光市母子殺害事件報道に対してBPOから意見書が出た時も、ネットでは似たような反応が見られた。
HugeDomains.com - Shop for over 300,000 Premium Domains*5

 報道が恣意的で誤解があるっつーなら、具体的にそれが何であるのかハッキリ示しなさいっつーのな。
 これでBPOの胡散臭さも増したっつーか、弁護士っつーのはホントにどうしようもない連中だっつーのが、またも明らかになった感じ。

( ´Д`)「市井の意見に反するのが正しいと思っとる連中が少なくあらへんからのう。感情押し殺して機械的に処理するんが、平等に繋がるとでも思っとるんやろーけど」

 弁護士の職業的に致し方ない部分があるのも事実だけどね。しかして、中道だっつーならこの場合、BPOはどちらに干渉してもいかんのよ、本来。
 報道が被害者寄りになっているっつー事は、一方で民意の反映って意味もあるんだから。もしそれがおかしいとする意見があるなら、今頃ネット上ではその報道矛盾が盛大に論議されているよ。
 逆に云えば、マスゴミ報道とネット議論が一致しているっつー事は、つまりそうした義憤が社会的に正しい感覚として共通認識が成立しているっつー意味であってさ。

( ´Д`)「この件に関しては、加害者擁護の意見なんか殆どあらへんしな。このBPO委員長のアホタレ弁護士は、それがバランス欠いとる思っとるんやろーけど」

 バランスがあるからこそ、悪意の是正に対して皆の意見が一致してるって話なんだけどね。
 っつーか、被害者をバカにしているし、視聴者もバカにしているし、川端和治弁護士っつー名前はしっかり覚えておいてやろう。うふふふ。

しかしBPOから報道機関に対しては詳細な意見書が送られている*6。ネット記事だけを見て根拠が示されていないと文句をつけても、それこそ報道に責任がある話だ。
そしてネットでは多くの議論が行われており、結果として弁護団を単純に全否定する法曹サイトは極めて少なくなった*7。メディアでも、弁護団の正当性を伝える報道は複数あった*8
そもそも、報道と世論が一致していることは、報道の妥当性を裏付ける根拠にはなりえない。大本営発表という言葉が否定的な意味で使われているのは、昨日や今日に始まったことではない。むしろ誤った内容の報道に世論がなびいたからこそ批判されているのだ*9


そして4月25日の『たかじんのそこまで言って委員会』で光市母子殺害事件が取り上げられ、解説委員の辛坊治郎氏が今枝仁弁護士達に対して批判した。
『たかじん』より ~今枝弁護士の言葉を聞いて~ | 旧 独断雑記 XYZ*10

マスコミということで言うとね、この本※読んでて1番「もしかすると分かってないのかなこの人たち」と思ったのは、今枝さんもそうだし、他の弁護士もそうだし、メディアスクラム、マスコミによる弁護士のバッシングという言葉が要所要所に出てきて、自分たちを批判してるのはマスコミだけだとどうも思ってる節があって、その向こう側にある声が上げられない、もちろん弁護士よりのシンパシーの人もたくさんいるでしょう、でも多くの人たちは「なんだ、あのドラえもんは!」と、「魔界転生とはなんだ!」と、「これを聞かされた本村さんはどう思うんだ!」と、煮えくり返ってる人は山ほどいるわけで、メディアじゃないと、その向こう側にある普通の市民の気持ちがどこまで見えてたのか、この本読んで、読めば読むほど「分かってないは、この人たち!」と、断ぜざるを得ない。

話しながら興奮した辛坊氏は、机へ今枝弁護士の著書を叩きつけた*11。続けて勝谷誠彦氏も「どこまで世間を知ってるのかと非常に・・・マスコミだって商売なんだから、金払ってくれる人たちがいないとそんなこと言いませんよ。逆に言うと」と、辛坊発言にくみした。
結局、番組において主張の根拠が語られることはなかった。あったのは、視聴者が求める内容を報じただけという責任逃れだった。
BPOが組織の趣旨からマスメディアのみを批判するのは当然としても、一般視聴者を強く批判しない弁護士*12の優しさは、少し考え直すべきかもしれない。見逃したこと自体が批判の対象となり、責任逃れに利用されてしまうのだから。


情報発信の責任を認めたがらない報道者。騙した者ではなく騙されていることの指摘を否定する視聴者。誤った情報を流し続ける共犯関係。
詐欺師と被害者の間によく見られる関係だが、さて、どのようにして誤りを正すべきなのか。啓蒙的な態度を見せれば「上から目線」等と拒否されてしまうのだから難しい。

*1:強調は引用者。

*2:もちろん記者会見もその一環だ。

*3:ただ、最高裁が自ら判決を出さずに差し戻したのは、死刑の「ハードルが下がる」判例を高裁にとどめておきたかったからという説はある。光市母子殺害事件が上告棄却となれば高裁判例として確定するだろう。もちろん、地裁や高裁の判決も判例となるわけだが、最高裁に比べると扱いは軽くなるようだ。

*4:http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20080425/1209113175でDr-Seton氏が「だからこその折り合いが「永山基準」であったわけで、「今回は特別扱い」となれば、皆がその「特別扱い」を望む事になります。世情にあった判決、となれば、今後ハードルが下がり死刑連発となるのは必至ですよ。」と端的に指摘している。

*5:2008年4月15日の記事。強調は引用者。リンク先ページは成人向けイラストありhttp://www.tikuwa.com/sc/2008/04.html

*6:ネット公開もされている。http://www.bpo.gr.jp/kensyo/kettei/k004.html

*7:最高裁欠席の件で安田好弘弁護士を強く批判していた元検弁護士の方でも、当時の状況が明らかになった後は一定の理解を示している。

*8:最高裁欠席の直後でも、安田弁護士の主張を伝えた東京新聞記事等があった。http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/colum10-yasuda.htm

*9:発言を引用したサイトが、情報の正確性でなく民意にそっているか否かを報道批判の根拠にしている点は、ある意味で「マスゴミ」という呼称と一貫性があると思う。

*10:番組に対して高評価しており、極端に辛坊氏が不利なテキスト起こしは行ってないだろう。

*11:実際の映像を見ないと、正確な雰囲気はわからないかもしれない。一応注意しておく。

*12:今枝弁護士だけでなく、安田好弘弁護士も世間から誤解されることを当然だと覚悟するような発言をしている。