法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

重要事件の冤罪が複数

放火と殺人で無罪判決。
http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/5543/

 判決で田口裁判長は、福岡県警が片岸被告と女性を長期間同房にし、房内での言動を聞き続けたことについて「被告は意図的に同房にされ、知らずに捜査機関による取り調べを受けた」と指摘。「被告が有利か不利か判断できず、黙秘権を伝えていない」と述べた。さらに「同房者は、積極的に話を聞き出そうとした。無意識に捜査側に迎合するおそれがあり、聴取内容に虚偽が入り込む危険性がある」とした。

 「犯行告白」に関しては「首と胸を刺した」などの「根幹部分は被告が同房者に話したと認められる」としたが「被告が思い付きや、虚構を織り交ぜた疑いがある」と指摘。争点の1つだった古賀さんの首の傷も「生前の傷とするには合理的な疑いが残る。首を刺したとの告白は客観的な事実とは合致せず、秘密の暴露とは言えない」として信用性を否定し「真犯人と断ずる確たる心証を得られなかった」と結論付けた。

 判決では、福岡県警が約2カ月半の間、計画的に2人を同房にし、同房者から連日、被告の言動を聴取していた点などを「代用監獄への身柄拘束を捜査に利用した、との誹(そし)りを免れない」と厳しく批判。そこから得た「犯行告白」の信用性を否定した。

 同房者を捜査に利用する手法は、無罪が確定した「松山事件」の再審判決(1984年)でも「代用監獄制度の運用を危うくするもので許容しがたい」と指摘されていた。それでも、片岸被告を容疑者としてマークしながら一貫して否認され、物証もない中、福岡県警はこの手法を使った。それは、心証で容疑者を絞り込み、なりふり構わず自白を得ようという、なおぬぐい去れない「冤罪を生み出す体質」を浮き彫りにしてはいないか。

この「自白」問題は、他の現在進行している刑事裁判にも疑わしい例がある。
たとえば山口県光市母子殺害事件において、被疑者に対する心証を悪くしている要因。何度も報道されて有名な、友人に宛てたという手紙だ。高裁の判決では、不謹慎でもあるものの煽られて書かれた文面であって、全体を見れば反省している節もあると判断されている。
手紙の相手は、多くの報道で「友人」とだけ紹介されていたが、実際は拘置所の隣房に入っていた別の被疑者。監視が厳しいはずの状況で煽るような文章がやりとりされたこと、そして検察が手紙を入手した経緯自体について安田弁護士が疑問をていしていた。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/hikari3.htm

 私からすると、どうしてあの手紙が検察官の手に入ったかというだけはでなく、どうしてあんな手紙を発信することができたのか、ということが不思議でならないわけです。普通、手紙というのは拘置所の職員が全部検閲しますから。彼らは非常に教育者的な気概を持っているというか、そういう役割を自負していますから、変なものはチェックして、口を挟んでくるんです。ときには郵送を禁止したり、ここを削除しろ、書き直せと平気で干渉してくる。普通だったらあんな手紙を出せるはずがないんです。被告人に対して、「何を書いているんだ」と、叱るのが当たり前なわけです。ところが、それが一切ないまま手紙が通って、今度は堂々と法廷に証拠として出てきて、これほどひどい奴だという証拠になってくる。信書そのものが犯罪を構成しているわけではないのに、刑事事件の証拠として採用されてしまうんですね。通信の秘密、通信の自由はどうなっているんでしょうね。

安田弁護士の疑問は、けして無根拠な憶測ではなかったようだ。もちろん、手紙のやりとりをした「友人」が、検察や捜査側に利用されていたと断言もできないが。


もう一つ、三文記事的に扱われている無罪判決。
http://www.asahi.com/national/update/0303/TKY200803030496.html

 知人宅マンション入り口付近でもみあいとなり、木製ドアを壊したなどとして06年11月に逮捕、起訴された。弁護人によるとドア中央の穴は横24.4センチ、縦72センチ。一審は「激情している精神状況を考えればくぐり抜けることは可能」とし、懲役1年2カ月執行猶予3年を言い渡した。

 控訴審では、同じ大きさの穴を開けたベニヤ板を弁護側が用意し、くぐれるかどうかを実験した。結果を踏まえ、原田国男裁判長は「胸囲は101センチ、胸の厚さが29センチあり、くぐり抜けるのは相当困難」と認定。目撃者の証言が信用できないことや、ドアの穴に残るはずの衣服の繊維について検察側が立証しないのは不自然なことなどを指摘して、「小桜さんがドアを壊したとするには疑いが残る」と結論づけた。

冗談のような理由だが、要は被疑者の体格が特異なおかげで無罪判決が出たということ。もし少しでも痩せていれば有罪判決となった可能性もあるのだから*1、幸運というしかない。
検察の主張する犯行経路が物理的に不可能という可能性は、冤罪が疑われている袴田事件でも指摘されている。
http://www.hakamada.net/hakamatajiken/urakido.html

 写真に疑問を持った弁護団は、戸のたわみの力学実験を実施し、その結果、上の留金をかけたままでの状態では、人が通ることはできず、無理をすると留金のネジ釘が抜けてしまうことがわかりました(「前田鑑定書」)。

袴田事件は、まだ再審請求が通ってすらいない。

*1:そもそも一審の説明がひどすぎる。