法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

護憲かつ改憲かつ護憲かつ

日本テレビ系月曜21時で放映されている『今夜はシャンパリーノ』にて、憲法9条特集があったので視聴。しかし、別に期待していたわけでもなかったが、見続ける価値があると思えなかったので途中で視聴停止してしまった。


まず、スタジオのタレント陣が9条に限定して改憲護憲に別れるという序盤から首をかしげた。
現実の憲法論争では、9条という一部にこだわる前に、国家の枷であるべき憲法を時の政府が簡単に変えていいかという問題が存在する。規則を守るべき存在が規則を自由に変えられるのでは、規則の存在意義が薄くなる。この点で私は護憲という立場だ。
次に、憲法の内容で変えるべき所があるかといえば、いくつかあるだろうとは思う。新しい権利を明記すべきという主張は前から存在するし、天皇制へ文句がある人は今も相応にいるだろう。この意味では、積極的ではないものの改憲という立場*1
そうした論点をふまえてから、現憲法で最も遵守されていない9条を議論してほしい。なお、憲法が現実と矛盾してきたなどという番組でもくりかえされた説明は、自衛隊が自然現象で生まれたとでもいうような奇妙な主張だ*2。詭弁をもって憲法違反の責任を誰も取ろうとしない限り、9条を変えて違反の証拠を隠滅させてはならない。よって9条関係では護憲という考えを持っている。
……改憲護憲と一口にいっても、争点は一つではない。同じ考えでも場合によっては護憲にも改憲にもなりうるわけだ。


さて、番組は主要政党の憲法に対する立ち位置を、波田陽区が問いにいくという流れになった。
そのさい「もし外国が攻めてきたらどうするか」という仮定のみ質問したことも誤りと思う。仮定で問うこと自体はいいとしても、外国の脅威を考慮するならば、「もし自国が外国を攻めようとすればどうするか」「もし軍隊が自国民を攻撃するならば」等も同時に問われなければならない*3
何事も長所と短所、危険から守り危険を与える可能性を考慮に入れて決定するべきだろう。けして可能性が高いといえない外国の脅威*4のみ持ち出しては、9条改憲ためにする議論と思われてもしかたがない。


各政党の主張紹介で、国連決議を重要視するかどうかを除いて自民民主が大きく違わないという指摘は、ある程度は正しいと思うし文句はない。
次に公明党を経て共産党へ質問しに行ったわけだが、外国に攻められたさいにあるべき物を全て活用する、自衛隊は縮小させる予定だが現時点では共存するという回答がなされた。それに対し、スタジオからは「矛盾」という感想が出てきた*5。しかし、何が「矛盾」というのか私にはわからなかった*6。費用対効果が不満だから縮小いずれ廃止するとして、廃止前に利用する機会があるなら利用するというのは極めて現実的な思考だろうと思う。


目新しい話が出る様子もなかったので、この辺で番組視聴は中止した。もしかして後半で興味深い話や議論があったかもしれないし、前半の訂正補足があったかもしれない。番組内容にふれた部分は、あくまで見た範囲においてと理解してほしい。

*1:国の枷であるべき点と合わせ、憲法は基本的に国家機関の制限を厳しくし、国民の権利を拡充する方向にのみ変えるべきと考える。

*2:犯罪が無くならないから法律を無くすという論理に置きかえれば、どれほど奇妙な主張かわかるだろう。また別に、自衛隊を解体してから再軍備を考えるという主張なら、まだしも説得力があるのだが。

*3:自国軍が暴走する可能性を思いつかない人は、よほど歴史に無知か、自分と国家を同一視する幻想を持っているかの、どちらかだろう。

*4:周囲を海で囲まれ、海岸が入り組んでいて大部隊が上陸しにくく、資源が少ないため占領で得る利益も少なく、手広く貿易を行っており消えれば多くの国が打撃を受け、さらに国内で紛争をかかえていない日本で、軍隊によって国民が利益をえる状況が思いつかない。基本的に警察や海上保安庁で対処できる程度に収まりそうだ、と思うのだが。

*5:島田紳助氏は、禁煙を続けながら煙草を吸うようなものだとたとえた。

*6:たとえば、無駄な公共事業で作られた建物があるとする。そこで政権が替わり、維持費節約のため建物を使用中止にした。直後に災害が発生した時、その建物を避難場所として使うと、新政権の行動は矛盾していることになるだろうか。