法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

自国の戦争犯罪を正当化するために……

相変わらずな伊瀬平次郎氏が、いくつか気になるエントリをあげている。強調は引用者。
隼速報 | 「隼機関」 9

(和訳)徐玉子教授が貴大学に雇われていることを確認致したい。徐が、WCCWという団体の発起人であることをご存知のはず。なぜか、この団体は、ここ数日、ウエブサイトで見る事が出来ない。この「徐」という人は、何十年にも亘って、日本人を憎悪することを教えて来た。この行為が、在米韓国人と在米日本人の間に、さらに、日本国内の、当2国民の間に深刻な緊張を起こしている。私たちは、徐の動機が政治的なものと信じている。彼女はクリスチャンと自分では思っている。だが、クリスチャンとは、このような振る舞いをする人たちなのか?わたしは、「日本国民を憎む」ことを教えるクリスチャンに、一度も、会ったことがない。

(解説1)この書簡を、WASHINGTON BIBLE COLLEGEの学長(DEAN)に郵送する。さらに、「韓国人学生バージニアテック乱射事件」を足し、一部分を書き換えて、全米の有名大学200校・アイビーリーグに「日本憎悪集会」を許可せぬように通知する。

そもそも徐玉子氏が日本人を憎悪することを教えてきたという根拠がないのに、クリスチャンと自認していることを云々してもしかたないだろう*1
さらに慰安婦問題とは全く関係ない悲惨な犯罪を持ち出して、伊勢氏は何を主張しようというのだろうか。まさか個人*2の犯した罪をもって国家や民族に責を求めるつもりではないだろうと思いたいが。

1)DCの弁護士さん、E・K氏が、「政治上の名誉毀損訴訟は米国裁判所は、“政治上の発言の自由”が理由で敬遠する」「日本憎悪集会を中止させる手段を名誉毀損訴訟以外で考えよ」「学級で人種差別を受けたために、登校できなくなったなどは訴訟が可能」だそうだ。そこで、伊勢は「人種差別相談の窓口」を開く計画である。

E・Kさんは続けた、「隼ブログを読むと、反日団体は、全米各地の大学のキャンパスを使っている。その大学の学長たちは、州政府・連邦政府から、減税・助成金の待遇を受けている。学長(DEAN)に、抗議文を出せ」「決議の廃棄が可能なのか、二人の米国議会下院専門のロビイストの意見を聞いてあげる。1〜2週間は待て」だった。

訴訟ではなく、関係者への抗議で押さえつけよう弁護士から助言された様子。やっていることが圧力団体と大して変わらないというか。


そして最も気になったのが以下のエントリ。
隼速報 | 「汚い罠」

ジョージ・W・ブッシュ大統領自らの訴えにも関わらず、民主党下院議員たちは、オスマントルコが1915年にアルメニア人を大量虐殺したという決議を支持した。下院外交委員会が採択したこの決議は、カリフォルニア選出の民主党議員、アダム・シフが書いたものだ。シフ氏の選挙区は、これまた、最大のアルメニアアメリカ人居住区なのだ。

これら二つの決議に「賛成」と答えた議員は、私の考えでは裏切り者だ。彼らはアメリカの死活的同盟国および、アメリカ合衆国自身に対する裏切り者なのだ。

決議に賛成した下院議員の主張は、「人権」と「良心」なのだった。しかし、これらの決議はアメリカの兵士たちの生命を危険にさらしている。この下院議院らは、自分たちの主張する言葉の意味を深く考えなかったのだろうか?

日本に対する「慰安婦決議」とトルコに対する「アルメニア人虐殺決議」は、カリフォルニアの民主党員に取って甘い蜜だった。どちらの弾劾決議も、世間知らずで事情を知らないアメリカの政治家が飛びつくようなセールスポイントがある。一方で、ホンダ、ラントス、ペロシたちは、このような「対日・対トルコ屈辱決議」を通せば、アメリカの国家安全保障が重大な危機に陥ち入ることや、アメリカ兵がより危険な環境に追いやられるという概念をすっかり忘れていたのだ。

トルコのエルドアン首相は素早く動いた。まず、駐米トルコ大使を本国へ召還した。さらに、アメリカとの通商協議もキャンセルした。彼は今議会に、イラク北部にあるクルド人テロリスト・キャンプへの軍事攻撃を承認するよう、働きかけている。トルコの首相は、クルド人ゲリラの問題で、アメリカはトルコを助けてくれないと確信しているのだ。トルコ人は伝統的に、言行一致の人々だ。彼らは必要とあらば、イラク国境を越えるだろう。

日本ではあまり知られていないが、トルコでのアルメニア人虐殺は、欧米では相当に緊張を持って語られる問題だ。米国だけでなく、数年前からイギリスやフランスからも批難する動きがあった*3米国下院決議も、戦争犯罪は時間が経過しても免罪されるべきではないという世界の流れで存在している*4。ちなみにトルコ国内では虐殺を矮小化する歴史修正主義も存在するという。
さらに伊勢氏は例によってトルコ親日説も合わせて主張されている。

我々日本人は、トルコ人が如何なる決定を下そうとも、その決定を支持するものだ。日本民族とトルコ民族は、血を分けた従兄弟(いとこ)同士なのだ。我々の友情は1890年に、トルコの船が和歌山県沖で沈没し、その乗組員を沿岸の漁民が救助したことに始まる。

昨年夏、日本の小泉前首相はイスタンブールを訪問した。彼は出迎えたトルコの人々に、満面笑顔で手を振った。その前に訪問した中国や韓国で受けた冷たい儀式。それとは異なるトルコの人々の温かい歓迎を楽しんでいたのだ。

訪問日程の終わりに、彼はトルコのパイロットらに会って感謝を述べた。20年前イラン・イラク戦争の際、日本の航空会社がフライトの乗り入れを断った。その状況を知ったトルコのパイロットたちはテヘランから脱出する日本人たちのために飛行機を飛ばしてくれたのだ。

日本人やトルコ人の示した尊敬するべき行動を、こういう話に持ち出してほしくないと思った。その口で「我々日本人」などと勝手に日本を代表されても困る。
そして愚かな決定であるならば、支持しないことこそが良き関係というものではないか。どうして伊勢氏のような人は「如何なる決定を下そうとも、その決定を支持する」と全肯定か全否定かの2択でしか考えられないのだろうか。

*このエントリを駐米トルコ大使館にメールしました。

従軍慰安婦問題とアルメニア人虐殺が同様に見られていると知って、トルコ政府が行動してくれれば、いいことだと思う。伊勢氏の意図とは逆の意味で。


実は伊勢氏に限らず、従軍慰安婦制度を擁護するためにアルメニア人虐殺を擁護する主張は少なくない。「トルコ」や「従軍慰安婦」といった単語を合わせて検索してみればわかる。
自国の戦争犯罪を擁護する者が他国の戦争犯罪を擁護するかどうかは、いちがいにいえない*5。しかしあらゆる戦争犯罪を問題視しない主張にいたるなら、それは意図に反して自国をおとしめる……反日活動に他ならないだろう。

*1:歴史上、侵略や虐殺に加担したクリスチャンも多いが、話が横道にそれるのでさておく。

*2:犯人は韓国より米国に属しているという見方が現地でなされていたりもする。

*3:http://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuya/REKISI/sitenlog/news010129.htmlhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuya/REKISI/news071022.htmlが歴史的経緯もふくめてわかりやすくまとまっている。

*4:自国に対しては甘いという評価はあるにしても。

*5:この点では、最新エントリのコメント欄が興味深い。http://falcons.blog95.fc2.com/blog-entry-49.html慰安婦の問題にトルコをつかうな 米民主が絡んでいるからといってこのブログにそれは違うと思います 2007/11/01 22:37 | 鹿丸」