橋下徹弁護士のブログに新しいエントリが上がっていた。
http://hashimotol.exblog.jp/6366720/
校正不足*1なところを見ると、本当に橋下弁護士1人で書いているブログなのか*2。
さて、橋下弁護士は光市母子殺害事件について語る前に、オウム真理教弁護団について批判しているのだが、この時点で不思議なところがある。
以下、強調は引用者。
僕ですら、刑事裁判のときにはスーツネクタイで出廷する。被害者が存在するし、刑事裁判は社会全体の公器だからね。
民事の証人尋問のときにも、相手に直接接することだから、スーツで出廷する。ネクタイは場合によるかな。この辺は民事ということでご容赦を。
バカじゃないの。なんでたかだか弁護士相手に、きちんとした服装を、くそ暑いのにしなきゃなんないの。当事者じゃなく代理人なんだから気を使うことはない。
刑事事件でも相対するのは検事であって被害者ではないだろう。
私個人も背広やネクタイは嫌いなので、服装で礼儀を示すという考えも好きではないが、橋下弁護士の激しい同業者嫌悪は横から見ると不思議。
麻原弁護団は、刑事裁判のこの当たり前の性質について全く理解がない。
刑事裁判は被告人の、いや刑事弁護人のためだけにあると勘違いしていた。
だから、自分たちの主張が聞き入れられないなら、書面の提出を拒もうと。
ばっかじゃないの!!それによって、どれだけ被害者遺族が、社会が迷惑するかなんて全く頭にない。
色々と考えて行動したかもしれないのに、なぜ弁護人が自身のことしか考えていないと断言できるのだろうか。
何より、直後では自身で弁護人の行動が「業界の論理」だった可能性を指摘しているではないか。
これまでは、書面の提出拒否なんていうこともまかりと通っていたんだろうね*3。刑事裁判、いや裁判自体が世間の風にさらされていなかったから。弁護士、裁判官、検察官という狭い狭い法律家の業界特有の論理が通用していたんだろう。
ところが、麻原裁判はそうはいかなかった。日本社会全体が関心を持ち、法律業界の論理だけが通用する状況ではなくなった。
その空気の流れを麻原弁護団は全く察知しなかった。これまでの業界特有の論理で行動し続けた。
その結果どうなったか。
麻原弁護団よりかは、公務員という立場上世間の風にさらされる裁判所が、これまでの業界の論理を捨て去った。
麻原弁護団が法律上の期限を守らないのだから、法律の規定にしたがって裁判の打ち切り。控訴棄却。そしてそれに異議を唱えた弁護団の主張を、最高裁もばっさりと切り捨てた。
極々当然のこと。
裁判所から、あの弁護団を懲戒処分してくれと弁護士会へ請求があった。
そしたら、下らん法律の解釈で、裁判所の請求を門前払いした。
まあ、裁判所からの請求は刑事裁判手続き中のみ有効と解せなくもない。
だけど、それじゃ、完全な法律オタクだよ。
法律なんて所詮道具。彼ら史上最強の人権侵害、迷惑弁護団のバッジを取り上げるために、裁判所の請求を認めるべきだった。そのように法律を解釈すべきだった。
同じ話題なのに、法律を扱う態度が正反対。
裁判所が裁判を打ち切ったら法律にそっていて当然と主張しているのに、弁護士会が同様に法律にそって懲戒を退けたら「法律オタク」と罵倒する*4……そう、橋下弁護士の主張は結局のところ法律にそっているかどうかではなく、「世間の風」なるものを基準にしているだけだ。
ちょっと前にテレビで見たけど*5、いかにも世間を知らないような弁護士が、母子殺害事件の被害者の首についた被告人の手の痕と裁判所が認定した被告人の犯行態様が違うと、ぶつぶつ言っていたけど、そんなことは裁判で言え!!そんなことはどうでもいいことなんだ。
はて、橋下弁護士は弁護理由の説明不足に怒ってたのではないのか。
弁護団は、裁判所が認定したのは被告人が馬乗りになって、順手で首を絞めたとなっているという事実に対して、被害者の首の痕から、いや逆手だったとどうでもいい事実の違いを延々述べている。その程度の事実の違いはどうでもいいんだよ。
検察や警察による作文の可能性*6を指摘することが重要ではないとは思えないのだが。過程抜きで結果が正しければいいと法律家が主張するのは、かなり珍しい光景だと思う。
あと、力を加減しやすい姿勢で力を入れたことと、力を加減しにくい姿勢で力を入れたことの違いは、殺意の有無を考える時に強い証拠となるという弁護団の主張には説得力がある。
弁護団は、細かな事実の違いを、ことさら大きく問題視する。
裁判なんて、科学じゃない。
刑を科すための社会手続きなんだ。
刑を科す前にまず被告が犯人かどうか、次にどの程度の刑が適切かを判断する順序だろう、常識的に考えれば。
なぜ刑を科すことを前提にしているのだろう、この弁護士先生は。
そんなこともせず、自分たちのカルト教義の信心のため、自己陶酔に浸って裁判を長期化し、被害者遺族の心を傷つけ、社会に対して弁護士不信を醸造させた、彼らカルト集団弁護士たちの行動は、完璧に弁護士法上の懲戒事由にあたる。
一審二審で判決が出ていたところを控訴したのは検察なのだが。
少なくとも、裁判が長期化するとわかってから弁護人が安田弁護士に変わったのだが、それすら知らないのだろうか。
本日(2007年8月31日収録、同年9月1日放送)の「たかじんのそこまで言って委員会」の収録において、やしきたかじん委員長に、僕は許可を求めた。
「彼ら弁護団は、自分たちの主張をメディアが取り上げてくれないと不満を言っていますので、ぜひこの番組に出席させて主張させて下さい。弁護士仲間に話すのではなく、一般の観客の前でそしてテレビカメラの前に出させることで、世間の空気にさらさせてください」と。
『たかじんのそこまで言って委員会』がいわゆる世間の空気とは思えないのだが。橋下弁護士は何をもって世間の空気と感じているのかを知りたいところ。
それから、今さらな話だが、メールやコメント欄を閉じるのは当然としても、世間の風を感じたいならトラックバックくらいは受けつけていいのではないか*7。
ブログを持って光市母子殺害事件について発言している弁護士は多いし、橋下弁護士自身も他の弁護士ブログを想定したかのような発言をしているし*8、受けつけてもいいと思うのだが。
*1:「このとんだもない事態を引き起こした」「かえってj被告人の権利の妨げに」等。「弁護団がやるべきことは、一審・二審で主張しなかことを、なぜこの期に及んで主張するのか。」にいたっては、文意そのものがわかりにくい。
*2:事務所にいる他の弁護士は1人だけらしい。
*3:こういう文章を見る限り、やはり橋下弁護士は刑事裁判を専門としていないように感じる。
*4:もちろん「オタク」は必ずしも中傷表現ではないが、橋下弁護士は罵倒のつもりで使用しているだろう。
*5:懲戒請求を煽った根拠をテレビで見たことを根拠にするのは、少しばかりどうかと思う。
*6:最初の鑑定でも同様の指摘がなされていたらしいことを考えると、捏造した可能性すらある。
*7:リンクされている法律事務所サイトに法律相談用のメールフォームや電話番号は記載されているが……
*8:http://hashimotol.exblog.jp/6239898/「法律オタクのお坊ちゃん弁護士が、この弁護団に対して懲戒請求をすることが、逆に違法になるなんてヌカシているけど、心配御無用。」