『アイの物語』では、人間が現実の他者に対していだく評価もまた、ゲドシールドの内側に作り上げた虚構に対しての評価にすぎないと断じる。
つまり、二種類の虚構が存在するという。他者を認識し許容する虚構と、仲間内でしか通用しない虚構。
もちろん、多くの虚構が仲間内でしか通用しない。しかし仲間内でしか通用しないことを何度も外部から指摘される小説*1は虚構であると自覚できるし、最初からフィクションであることを堂々と明かしても通用するだけの強度がある。しかし、疑似科学や歴史修正主義、多くの宗教や習慣はそうではない。
『アイの物語』は、フィクションの世界に生きるSFマニアの叫びであり、フィクションで生きる作家の自己存在証明だ。
左翼を自称し、実際に左派として活動もしている紙屋氏の書評も参考になった。
山本弘『アイの物語』
*1:著者の場合、SFやアニメ、マンガ、ゲーム等々。