法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

歴史

『草の乱』

1918年、北海道の寒村。ひとりの老人が、ずっと隠してきた過去を家族へいいのこそうとしていた。それは鎮圧された反乱の、民衆側の記憶だった。 1883年の埼玉県。世界的不況と松方財政による生糸価格の暴落、富国強兵のための重税、高利子の借金……いくつもの…

『NHKスペシャル』新・映像の世紀「第1集 百年の悲劇はここから始まった」

NHKの有名なドキュメンタリーシリーズ『映像の世紀』の現代版。初回の第1集は約百年前の第一次世界大戦を中心として、世界の変動を描きだしていく。 まず残念なこととして、あまりに公式サイトの情報量が少ない*1。 NHKスペシャル「新・映像の世紀」 番組本…

『リンカーン』

スティーヴン・スピルバーグ監督による2012年公開の伝記映画。リンカーン最後の4ヶ月を2時間半かけて描く。DVDで視聴したところ、映画が始まる前に監督が登場して、簡単な状況説明がなされた。 映画「リンカーン」オフィシャルサイト 南北戦争の終結が近づく…

「「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」が出たこと

米国の日本研究者を中心とした「日本の歴史家を支持する声明」*1に呼応してか、日本の歴史関係の団体からも声明が出された*2。 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150525/k10010091611000.html 歴史学や歴史教育に携わる研究者で作る学会などのうち、会員数…

『暁のヨナ』雑多な感想

ついに主人公のもとに伝説の四龍がつどった。これから父王を殺した敵と戦うべきか、それとも国を立てなおしていく簒奪者を許すべきか。何ができて何をしたいのか、それを問われる。 ひとまず世直しもすませて、当面の目的であった仲間集めも終わり、第一部と…

日本書紀を史実あつかいするなら、仁徳天皇の評価とひきかえに武烈天皇の評価もひきうけなきゃね

愛知県一宮市の中学校で、記紀が史実であるかのように校長が主張したという。 神話や建国記述「間違ってない」「感動した」 一宮市教委の注意で削除の中学校長ブログに激励(1/6ページ) - 産経ニュース 「神武天皇以来2675年に渡り、我が国は日本型の民…

「従軍慰安婦は日本における奴隷だ」という認識に対して、「奴隷は日本にまったくいなかった」とだけ返す没論理の問題

朝日新聞に対して訴訟をおこした「朝日新聞を糺す国民会議」が、2月23日に日本外国特派員協会で記者会見をおこなったという。 主に発言したのはチャンネル桜の水島総氏と、かつて韓国人を装って韓国批判本を出した加瀬英明氏。 その感想として山口智美*1氏ら…

『岩井俊二のMOVIEラボ』#5 ドラマ編 パート1/#6 ドラマ編 パート2

このドラマ編にて、映画の歴史をふりかえるトークバラエティ番組が終了。1分スマホ映画の投稿受付も終わった。 http://www4.nhk.or.jp/movielab/ ゲストの大林宣彦監督は、詩的な言葉をならべながら、俯瞰するように理知的に各作品を評していく。自作品では…

「最近のラノベ」を理解したい人へ薦める、単巻で完結する10冊

「ハーレムでもなく、主人公最強でもなく、主人公マンセーでもなく、オタク主人公でもなく、パロディ無し」*1という条件を、「最近のラノベっぽくなくて面白い最近のラノベ」の要件として示したツイートが話題になっていた。そのツイートを中心として、下記…

『岩井俊二のMOVIEラボ』#4 ホラー編

フランケンシュタインの怪物やドラキュラや狼男がメインだった時代から、ゾンビとオカルトが登場して米国独自のホラー映画として発達し、さらに『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』からPOVが流行し、かつては怪談映画ばかりだった邦画が『女優霊』からJホラ…

『岩井俊二のMOVIEラボ』#3 ラブストーリー編

今回は個人的な興味関心から外れているかなと思いきや、MCの岩井監督が語る恋愛映画が初代ガンダム三部作という。 http://www4.nhk.or.jp/movielab/x/2015-01-22/31/19620/ ガンダムは恋愛物?障壁こそ、愛を盛り上げる?など、名作を例にとって恋愛表現の神…

『岩井俊二のMOVIEラボ』#1 SF編/#2 特撮編

岩井俊二監督を司会に迎え、技法やジャンルごとに映画の歴史をふりかえる情報番組。さらに各回のテーマにそって、映画スタッフの卵たちがスマートホンで撮影した、1分間の自主制作映画を講評していく。 http://www4.nhk.or.jp/movielab/ NHK教育の毎週木曜日…

『タイムスクープハンター スペシャル』お正月パニック!改暦大騒動

1873年の1月1日に太陰暦から太陽暦に改暦された。その時代に2015年1月のカレンダーをもちこんでしまったタイムスクープハンターが、失敗を修正しようと右往左往する。 1月1日22時に放映された50分SPを、1月2日の再放送を録画して視聴した。 現在より過去の時…

「江戸しぐさ」と「小笠原流礼法」の影響関係

前者を偽史で成立したマナーとして批判し、実際に歴史ある後者を推す意見を見かける。ひとつひとつを名指しはしないが、「“江戸しぐさ”“小笠原流”」といった単語で検索してみると複数ある。 両者の歴史についてくわしくはないのだが、たまたま別件で調べてい…

『タイムスクープハンター シーズン6』CODE:900220 リベンジ 敵を討て!後編

今シーズンの最終回は、通常放映で初めての前後編。前編では、普段はタイムナビゲーターの古橋ミナミ隊員と分担し、復讐する側される側の2視点で敵討ちの実態を取材する。その前編で兄が返り討ちにあったため、後編では10年後の妹による敵討ちが始まる。 予…

創刊時の逸話に見る、『少年サンデー』と『少年マガジン』の編集方針が異なった源流

『藤子・F・不二雄大全集 ロケットけんちゃん 1』の巻末解説で、小学館の元編集者の立場で梶谷信男氏が書いていた*1。 講談社と小学館は社風も違いますが、編集者のタイプも違います。叩き上げのプロフェッショナルでまんが家に厳しく、あれこれ注文をつける…

疑似科学(の一分野)が甘やかされている一例

個々人が別個の問題にもとりくむべきという話ではなく、疑似科学に歴史修正主義がふくまれることを理解するべきという話 - 法華狼の日記の補足として、はてなブックマークのコメントを具体的にとりあげる。 はてなブックマーク - apesnotmonkeys on Twitter:…

個々人が別個の問題にもとりくむべきという話ではなく、疑似科学に歴史修正主義がふくまれることを理解するべきという話

個人的には、歴史修正主義者でも疑似科学は批判できることを、全否定はしたくないと思っているが。 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = …

「人間動物園」に言及したTVアニメがある

19世紀末の大英帝国を舞台とした、ゴシックホラーブラックコメディ人情劇『黒執事』。あくまでも執事という立場のパートナーと、とある貴族の少年がコントをくりひろげつつ、さまざまな事件を調べて、つきはなすように解決していく。 その第1期TVアニメ第22…

テレビ朝日版『ドラえもん』の誕生に高畑勲監督が貢献していた

『藤子・F・不二雄大全集 パーマン 7』を読んでいたところ、別紙壮一プロデューサーが巻末に寄稿していた。シンエイ動画のたちあげにかかわり、最近に退職するまで専務取締役までつとめていた人物だ。 もともと『ドラえもん』を制作するためシンエイ動画が生…

会話に括弧を使う時における1935年の規範事例

下記の話題とかかわりつつ、少し異なる話。 ラノベでカギ括弧を重ねて使うのはズルなのか技法なのか - Togetter http://d.hatena.ne.jp/srpglove/20140703/p1 多重カギ括弧は20年以上前から存在していた~友野詳氏の回想録~ - Togetter ここ最近に個人的な…

ふたつの意味の「歴史修正主義」と、代替できる言葉

「歴史修正主義者」より良い言葉があれば、それが定着すればいいと思うことはある。 「修正」しないことが歴史修正主義になることもある - Apeman’s diary 「歴史修正主義」に代わる適切な用語を提案してそれを定着させるべく努力してくれるというのなら実に…

『タイムスクープハンター シーズン6』CODE:456293 壮絶!雪山の戦い

日本の戦国時代で類を見ない雪中進軍の顛末を、出世しようとあがく足軽の視点で描く。 制圧兵器としての弓矢と、それを凌駕する超兵器としての鉄砲の、緊迫感ある攻撃描写は番組の得意とするところ。さらに今回は雪深い山奥という状況設定で、いつも以上に逃…

『タイムスクープハンター シーズン6』CODE:638316 元祖なでしこサッカー

大正時代のフットボール記録に、男性に混じって婦人2人が参加していたものがあるという。香川県の丸亀へと時間をさかのぼって知った、婦人2人がフットボールを楽しむようになった過去の秘密とは。 もちろん、なでしこサッカー試合に便乗した企画ではあるのだ…

『タイムスクープハンター』に対するツイッターのデマを、1年ごしで保守速報が拡散する

NHK総合で放映している『タイムスクープハンター』は、未来人がレポートと撮影をおこなっているという体裁で、名も無き人々の歴史を映像化したフェイクドキュメンタリー番組だ。 TSH 当時の髪型を俳優の地毛で再現し、江戸時代の既婚女性はお歯黒をし、戦闘…

『アミスタッド』

1839年、大西洋を航行していたアミスタッド号において、黒人奴隷が反乱を起こした。やがてアミスタッド号は米国に流れつき、拘束された奴隷について司法闘争がおこなわれる。 スペインも加わって奴隷の所有権をめぐる裁判がはじまり、やがて奴隷制をめぐる米…

『手塚治虫のブッダ−赤い砂漠よ!美しく−』

今から2500年前、いくつもの王国が群雄割拠するインド。 奴隷階級「シュードラ」に生まれた少年チャプラは、ひょんなことから魂が体から抜け出して動物に憑依することができる子供タッタと出会う。タッタに反物を盗まれたせいで母親を売り飛ばされたり、タッ…

茶道を題材とした自作小説『天下取り前夜』

はてな人力検索で有志がネット小説を書きあう企画「かきつばた杯」で、昨年10月に即興で書いたショートショート。締め切り当日に書こうとして間にあわなかった。 【人力検索かきつばた杯】#53 かきつばた杯を開催します。 2連… - 人力検索はてな 題は「天下…

茶道を題材とした時代小説『利休にたずねよ』が、差別主義者の標的になっている

私は未読だが、2008年に直木賞を受け、映画化もされて昨年末に公開された。しかし千利休の茶道の根幹に、朝鮮半島出身の女性との淡い恋があったという設定があるため、特定の人々の反発を引き起こしているらしい。 susahadeth52623氏の映画レビューエントリ…

『のぼうの城』

豊臣秀吉の小田原攻めにまつわる史実にのっとった歴史劇。石田三成がひきいる20000の軍勢と、小さな城にたてこもる500の軍勢の戦闘を描く。 原作小説はもともとコンテストで賞をとった映画脚本だったが、映像化するためにはいったん小説化してベストセラーに…