法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第10話 泣かないでレシピッピ…誕生!ハートジューシーミキサー

敵幹部ジェントルーは生徒会長の姿にもどり、プライベートで食事を楽しむことに。そこでたまたま和実たちと出会うが、特に距離をつめるわけでもない。そして別の敵幹部の策でジェントルーは強化した怪物をあやつるが……


小川孝治コンテ。アクションで微妙な背景動画をカメラワークのためにつかっていたり、枚数制限のあった時代につちかわれた東映演出らしさがないので、生え抜きの演出家なのに他会社から呼んだスタッフのように感じられた。
キャラクターを斜めから、それもアオリや俯瞰で見たカットが多く、その顔の立体感がちょっとおもしろい。少し前にツイッターで話題になっていた「かわいくない」作画を思わせる。
hokke-ookami.hatenablog.com
3人いる作画監督で最初にクレジットされている板岡錦が、作画監督としては原画の自由度を許容する傾向にあるところと関係しているのだろうか。


本筋は必殺技アイテムが新登場するだけの販促回で、ドラマとしてはあまり深められず、前回を受けて次回につなぐくらい。そのアイテムにしてもアクションがドラマと密接な感じではない。ただ戦闘終了後に、プリキュアに変身して調理器具としてつかおうかという思いつきに、壊れてしまうとローズマリーがあわてた描写が、販促商品の注意を物語にもりこむ手法として印象に残った。
また、敵幹部から味方になるキャラクターが悪事をはたらいていた理由について、脅迫されていたとか洗脳されていたとかいう設定は安易としか思えず好きになれないが*1、今回で生徒会長の実家にからむ事情もあるらしいとうかがえたので、とりあえず先行きの興味はもてるようになった。

*1:自由な選択として悪事をはたらいていた時、味方として受けいれる説得力を出すことが難しいこともわかるが。

『ドラえもん』デビルカード/みたままベレーで天才画家

「デビルカード」は、どうしても300円がほしいのび太が、ドラえもんの隠していた魔法陣をつかって意図せず悪魔を呼びだしてしまう。悪魔は身長1mmごとに300円を出すカードをくれて……
 展開のパターンが完成した中期原作を、2006年のアニメ化以来のリメイク。寺本幸代コンテ演出で、ベガエンタテイメントが制作協力。
 寺本回らしく映像に力が入っていて、のび太の悪夢で、サイズが小さくなる主観映像で部屋が相対的に大きくなるのを緻密な背景動画で表現したカットが目をひいた。その後に服だけが残ったカットから、のび太が原作と同じように着がえているカットにつないだ小技も印象的。余った袖を折りかえしている地味な描写もリアリティをあげている。
 物語も原作通りに、デビットカードのダジャレのような悪魔のアイテムで少しずつ追いこまれていく恐怖をていねいにアニメ化していた。身長2mすべてつかっても60万円にしかならないのでは子供にしかつうじないだろうな、と歳をとるごとに実感する。
 しかし『宇宙小戦争』のリメイク映画*1が公開された直後にこの原作を選んだのはなぜだろうか。どんなものにも効果の期限があるとドラえもんが語り、特にスモールライトでポイントとなる映画だ。ビッグライトによる巨大化が永続的ということを前提した「デビルカード」との矛盾を指摘されがちなだけに、よりによって今アニメ化するのは逆に話題になることをねらったのかどうか……


「みたままベレーで天才画家」は、自主的なスケッチ大会で出木杉の絵が絶賛される一方、ラクガキのような絵しか描けないのび太はおちこんでしまい、秘密道具にたよろうとするが……
 やや後期の原作を、2005年リニューアル以降で初アニメ化。高柳哲司コンテに岩永大蔵作画監督で、多数のゲストキャラクターが登場しつつ作画が整っている。
 秘密道具は「見たまま」といっても、記憶にある情景というより過去にたちあった思い出したい情景*2を写真のように正確に描く道具。なので認識できていない過去の情景から手がかりを見つけられる。
 秘密道具をつかって描いた絵が液晶モニターのように細かいドットが見えることが、写真と解釈されて絵ではないと笑われるオチの説得力を地味に足している。
 アニメオリジナル展開として、カバンをもっている男が何をさがしているのか語らせず、怪しく印象づけることで、サスペンス性を高めて捜査パートも長くしたアレンジも良かった。
 しかしアニメオリジナルでアイドルの姿を楽しむため1秒ごとの絵を描かせる無茶ぶりギャグを見ると、人間にやらせるべきことではないと思うわけだが、それがアニメーターの仕事ではある。その描写があっただけに、犬に10秒きざみで犯行現場の絵を描かせるのもかわいそうだと思ってしまった。最初は5分きざみくらいにして、カバンがなくなった時間帯を少しずつしぼりこんでいくべきだったのでは。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:のび助の夢を描かせると自分自身の喜ぶ姿が描かれるので主観視点とはかぎらない。さがしている交番を描いた描写もあるので、想定している情景を描かせる機能もあるようだが。

『声優ラジオのウラオモテ #06 夕陽とやすみは大きくなりたい?』二月公著

大規模プロジェクトのユニットメンバーに抜擢された歌種やすみと夕暮夕陽。さらに先輩声優や新人声優が参加するなかで、それぞれ分割したユニットのリーダーをまかされることに。そしてあくまで企画としての競争がはじまるが、歌種と夕暮はたがいをライバルと思い、本気で競いあおうと周囲を引っぱるが……


2021年12月に発売された、女子高生の声優コンビを主人公にしたシリーズ。ユニットにわかれていることもあり、過去より歌種個人によりそい、その視野のせまさもふくめて青春小説らしさがあった。

半年前に出た5作目では制作トラブルつづきのアニメ現場が描かれたが、そこで示唆されていた同時期の大規模イベントにおけるトラブルを描く。
hokke-ookami.hatenablog.com
新登場したのは元人気子役の小学生声優の双葉ミントと、生活を優先して実力をセーブする年上新人声優の御花飾莉。その設定から思い出されるのが主人公コンビ、子役としてキャリアをスタートした夕暮と、母子家庭で育った普段の顔を声優仕事では隠している歌種だ。
シリーズ主人公の鬱屈や停滞を抽出したキャラクターたち。さらに双葉のとある問題行動の原因が、シリーズの過去作で歌種がくりかえした無茶とそっくり同じ。作中でも主人公コンビの過去の暴走と御花が重ねあわせて、看過した責任を厳しく糾弾する。歌種のもうひとつの可能性である御花が決定的な批判をつきつける構図と気づけば味わいが増す。


1作目のクライマックスからくりかえされた、情熱をもって周囲をまきこんで無茶をして課題を乗りこえる若さだけの物語。このシリーズは心身を削る努力ばかり賞揚され、それによる問題の解決は前作でも引っかかりをおぼえた。
しかし今回はクライマックスにおいて、厳しい状態でもあえて耐えて休む意味をしっかり描いて、いったん立ち止まった。瞬間瞬間に輝いて燃えつきるだけではない、小さくとも継続して光りつづける意義。前作の対比で今作を用意していたのなら、シリーズの流れも理解できる。
おかげで、きちんと現代的な視点がある仕事のドラマとして読めるようになった。あくまでエクスキューズにとどまるか、シリーズのターニングポイントになるかまでは、次作を読むまではわからないが。

岸田文雄氏、首相として表現の弾圧をドイツの首相へ要請していたことが判明

日本軍慰安所制度の犠牲者を象徴する少女像を、ドイツ首都のミッテ区から撤去するよう要求したのだという。
ベルリンの慰安婦像撤去、岸田首相が要求 4月の日独首脳会談で | 毎日新聞

4月28日に首相官邸で開かれた日独首脳会談で岸田文雄首相がショルツ首相に「極めて残念である」と伝え、改めて撤去を求めたと明らかにした。ショルツ氏側の返答については「外交上のやりとりだ」として、明らかにしなかった。

つい先日にも、ヒトラームッソリーニ昭和天皇が並置されたことを拒絶して、ウクライナに表現をとりさげさせたばかり。
全体主義国家の侵略に追いこまれている国に対して、全体主義国家が侵略した過去の事例として自国がならべられている表現を削除させた国があるらしい - 法華狼の日記
切りはなした過去の国策的な問題が表現されることを国家として拒絶するという、悪い意味での一貫性がある。


毎日記事によると、官房長官は下記のように「わが国の立場」を主張しているが、そもそもそれが何なのかがわからない。

 松野氏は「政府としてはこれまでも関係者に対し、わが国の立場を説明してきたが、撤去に至っていないことは極めて残念だ。引き続き、像の速やかな撤去を求めていく」と述べた。

2015年の日韓合意を読みかえせば、少なくとも軍の関与で女性を犠牲にした歴史を認めて、政府の責任も痛感している立場のはずだ。
日韓外相会談|外務省

慰安婦問題は,当時の軍の関与の下に,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は,日本国の内閣総理大臣として改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。

少女像に代表される記念碑については、大使館前の安寧や威厳の維持に限定されている。しかも認めらているのは一方の「懸念」だけ。ドイツの一地区の記念碑には何の効力もおよぼせまい。

韓国政府は,日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し,公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても,可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する。

ちなみに、はてなブックマーク等ではid:toratsugumi氏による下記コメントのように、日韓合意があらゆる犠牲者表現を規制できるかのような主張が一部で見られる。
[B! ドイツ] ベルリンの慰安婦像撤去、岸田首相が要求 4月の日独首脳会談で | 毎日新聞

韓国とのイアンフ合意で、あちらさんが(場所を問わず)あの金色醜女像の撤去に努力するって一節があって、実はこれはドイツではなく韓国相手に蹴り入れてるだけなのだった。岸田、あの合意締結した当事者だからな?

表現の醜悪さはさておき、合意内容について誤解が相当に広まっていそうに思えてならない。官房長官のコメントを読むかぎり、日本政府が誤解を積極的に解くこともなさそうだ*1

*1:ちなみに外務省サイトが取組について主張するページでも、歴史学的において日本軍慰安所制度が「性奴隷制度」であったことなどは根拠もなく否定する「立場」が書かれているが、さすがに記念碑を規制したい主張は在外公館にかぎっていて、それ以外の場所の表現には直接的な言及はおこなっていない。 慰安婦問題についての我が国の取組|外務省

本当にそのようなことがあったなら、直接的な性的強要に発展しなかっただけでも、被害者も加害者も生まれず良かったのでは、と思った

発言のなかに誹謗中傷にあたりそうなものもあったりして、それはそれで批判されるべきだとして。
[B! 増田] 「弱者男性の姫」による5月6日東京セックスボランティア炎上
[B! ミソジニー] 弱者男性への無料セックスボランティア活動を行っていた揉めん豆腐さん(とうふさん)、約束の日に「救済」を行わず炎上。引退する
性交とは水泳のようなものだ。望んでやれば楽しいが危険性があるし、技術や用意がなければ危険性が増す。楽しめなければ苦痛でしかないし、いっそう危険性が増す。苦痛をおして業務としておこなうなら、それ相応の対価が与えられるべきだ。
泳ぐ自由は認められるべきだし、あえていえば危険な入水を決行する自由もあるかもしれないが、誰にも強要されるべきではない。少しでも海が危険に感じたり気が進まなくなれば直前で中断してもいい。いっしょに泳ごうと大切な仲間と約束していても、その準備で相手の金銭をつかっていても、客観的には安全な凪の海でも、中断をためらう必要はない。海に来た動機が浅はかな思いつきだったことは、立ち止まってはならない理由にまったくならない。
若ければ泳ぐ機会はいくらでもあるし、老いてもそれなりにできるものだ。とはいえ海が荒れ狂えば荒れ狂うほど、たいていの人はそこで泳ぎたくなくなるだろう、とも思う……


今年に経験した直喩的なできごとを思い出しながらここまで書いて*1、性的同意について紅茶をつかった比喩を警察がYOUTUBEで公開していたのを見つけた。
www.youtube.com
料理をつかった比喩だという記憶でさがしていて見つけられないでいたが、もとは英国警察の作成した映像だったとおぼえておくべきだった。

*1:春先の海も急に波が荒くなったりするから気をつけよう。