法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『テイルズ オブ エターニア THE ANIMATION』

2001年にWOWWOWで放送された、ファンタジーゲーム原作のTVアニメ。うえだしげる監督、川崎ヒロユキシリーズ構成。

良くも悪くも今は亡き制作会社ジーベックらしい、フェティッシュな性的シーンや原色ギトギトの彩色に満ちたファンタジー。作画がどんどんヘロヘロになっていくのもいつものパターン。いのまたむつみデザインのおかげか、ちゃんと水着などが文明レベルにあった縫製技術で作られているっぽいのは良かったが。


物語については、1クールとはいわないが、半クールくらいを飛ばして旅の途中から始まるシリーズ構成が謎。それゆえ旅の始まりは夢で見た回想ですまされる。それでいて3話から小さな諸島の王国に何話も泊まって、水泳勝負や温泉や酒屋のバイトなど萌えアニメっぽいエピソードが連続するのも謎。
……などと思っていたら、その小さな諸島が主人公チームの目的であるふたつの世界の衝突が歴史的に残された場所であることが判明。ロードムービーのように思わせて、予定外にたちよった場所こそが本筋の象徴的な舞台だった、という構成は意外性があって良かった。
本筋の黒幕っぽい存在も、主人公チームがロードムービー展開にもどるように思わせて、その真相でひっくりかえす。陰謀がそれなりにそれっぽくおこなわれていて、最終回まで見れば納得感はそこそこあった。大筋の話は結局アニメでは終わっておらず、大長編から1エピソードを抜き出したという感じは変わらなかったが。

「オタク」だけが陰謀論を信じるという話ではなく、「オタク」も米国選挙不正のような陰謀論を信じることがあるという話

id:Mikagura氏による上記ツイートが、はてなブックマークを集めていた。
[B! オタク] 御神楽 on Twitter: "20年末ごろ、マジで米大統領選は不正選挙なんて言ってる自称オタクがごろごろしてたし、大半は今でも大手を振って知らん顔してるよ。"
しかし最初にコメントをつけている下記の三氏をはじめ、ただ陰謀論と「オタク」をむすびつけたツイートのようにミスリードされて論評されているようだ。

id:type-100 自称ではない普通の人がハマるのが陰謀論というものなので、そういう風に切断処理してると足をすくわれるよ。/老人や否オタに多いというのも違うと思う。シニシズムから陰謀論にハマる人もいる。

id:paradisecircus69 陰謀論大好きな人ほど陰謀論に対して耐性があるのに対して、ネットで真実を見つけ出しちゃう人は抵抗力が弱い老人や純粋培養されてきた否オタに多い。ネトウヨ、反ワク〜も高齢者多いんだよね...

id:teebeetee オタク関係ないのでは

単純な事実として、Mikagura氏のツイートは、「芋健品 軍舞@ENJLkSYvDoTIL1L」氏による下記ツイートをリツイートした直後におこなわれていた。

コミックマーケットにボランティアで協力している医師として一部で有名な「Calci@Calcijp」氏の、陰謀論にそまる傾向を他人事のように揶揄したツイート。それを引用リツイートしての、自身も選挙不正陰謀論にかたむいていたという批判。Mikagura氏はそれにくわえて、属するコミュニティに陰謀論が広がっていたことを指摘したという流れだ。
そもそもMikagura氏自身も一般的には「オタク」にふくまれるだろうし*1、最初に引用したツイートは文脈を知らなくても切断処理より自戒に近い発言と読むべきだろう。

*1:クリエイター側にいたので、消費専門の「オタク」とは異なるという意見があるかもしれないが、語源からすると「オタク」と最初に呼びあっていたのは作り手でもある若者たちだったはず。

20歳が観るべきアニメ残り12タイトルを選んでみた

qjweb.jp
アニメ評論家の藤津亮太氏が、面白い作品や歴史的な転換点ではなく、ヒッチコック作品のように勉強として踏まえる作品のリストを作っていた。

このリストは「すべてのおもしろい作品」や「歴史的転換点の作品」を網羅することが目的ではない。

複数作品を組み合わせることで、アニメを貫くさまざまな文脈についても知ることができる、というふうに選んでいるところが重要なのだ。

巨人の星』のようにまともに見ていない作品も複数あり、不勉強ぶりを恥じるばかりである。


とはいえ、欠落している文脈を考える叩き台としても興味深いリストではある。現時点で藤津氏も『惡の華』を入れ忘れたむねをツイートしていた。

まず思いついたのが、マッドハウス制作で、アメコミ調のくっきりした方向性のビジュアル作品として、『REDLINE』……

……はアッパーな娯楽を期待させて青春のダウナーを描いているが、ちゃんと面白くよくできた作品なので、ここは『DEAD LEAVES』で……という裏切る方向性は今回はやめよう。
やはり一定以上、素直に作品としての良さもあるリストにしたい。そこで小池健のビジュアルも魅力的な『REDLINE』をリストに足したい。配信サイトによっては見放題で視聴もできる。


藤津氏のリスト全体をながめると、女性向け作品の少なさ、文脈の押さえづらさを感じる。
そこで原作とは異なりつつ美麗さのある荒木伸吾キャラクターデザイン、出崎統とはまた違う表現主義の演出として、山内重保による映画版『聖闘士星矢』。とりあえず『真紅の少年伝説』で。

また非ロボットのメカアニメ、いのまたむつみキャラクターデザインといった見どころから、『サイバーフォーミュラ』は入るのではなかろうか。先にあげた『REDLINE』と比較しがいもある。

キッズアニメらしさを残したTVアニメをあげたが、より客層をしぼったOVAでもいいかもしれない。


キャラクターデザインの潮流としては、すでにリストにある『御先祖様万々歳!』の前後もいくつかほしい。
ロボットアニメも異世界転生系アニメも少ないし*1、どのような角度からも立体として破綻しないことを目指した湖川友謙キャラクターデザインから、『聖戦士ダンバイン』。

美少女ゲームを日常系のようにTVアニメ化するはしりでもあり、瞳が大きくもアニメの立体として破綻していない千羽由利子キャラクターデザインが脅威だった『ToHeart』。映像ソフトはプレミア気味だが、配信サイトによっては安く見られるはず。


他にデジタル系の発展を見られる作品については、いくつかの作品を考慮しつつ落とした意図が語られ、新作が多くて選ぶ難しさも指摘されている。

とりあえず、当時は違和感を指摘する声も多かった、フォトリアルなCGをそのまま手描きアニメと同居させた『青の6号』。手描き部分でもデジタルによる彩色や、モーションブラーなども見られる。

同じ制作会社なので落としたが、意外な佳作として『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』も考えた。販促玩具をCGで複雑なデザインのまま登場させた文脈だけでなく、海外との合作という要素もある。
FLASH系もふくめたデジタル作画の潮流として、『ノエイン もうひとりの君へ』。京都アニメーション以前に、地方から完成度の高い元請け作品が送り出された文脈もある。

コンポジットの威力をOPなどで見せつけ、本編でも意欲的にグラデーション表現などをとりいれた『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!』。同じ制作会社の作品でも、とりこぼさないよう勉強でチェックするならこれだろう。


リストは『エースをねらえ!』の劇場版を最後にスポーツアニメが入っていない。
とりあえず『巨人の星』から多数ある野球アニメの文脈でなら『タッチ』を押さえるべきか。タイアップ主題歌にあわせたOP演出のおしゃれさ、スカした原作の空気の再現も見どころ。

おそらく出崎作品が多いので『あしたのジョー』は落とされたのだろうが、かわりに『はじめの一歩』はどうだろう。TVSPがまとまっていて見やすい。リアリティよりもアニメーションとして心地よい動き、デジタルを活用した汗しぶき表現。

なお、『キャプテン翼』や『スラムダンク』などは原作こそ魅力的でも、広すぎるコートなどでアニメ化作品は反面教師としてのあつかいが多いような気がする。


歴史的にふまえる流れとしては、やはり海外作品を意識したモノクロ短編『くもとちゅうりっぷ』から始めたい。ミュージカル調も心地よく、自然現象をとらえたエフェクト作画の出発点としても見どころがある。

かなり尺が短いこともあって、「映画好きが『カリガリ博士』は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ」*2とは言わせない見やすさがある。
長期シリーズの初リメイク映画であり、フィクションにおける恐竜観の変化や、デジタルによる描線表現の流れを押さえるためにも『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』はほしい。


最後に、ツイッターの応答を見ていて、藤津氏が『ジャイアントロボ』、おそらく今川版を落とした理由の説明があった。

しかし書き込みの過剰化ではないビジュアル向上という文脈で押さえられるはず。作画や演出のスタックワークで見れば『エヴァンゲリオン』につながる解釈が可能だろう。

ワルシャワフィルハーモニーを起用したBGMの厚みなど、音響面の変化も前後の作品と見比べれて感じられるところがあるはず。


とりあえず暫定的に思いついた追加の12作品リストができた。
20歳を想定しているので、勉強するまでもなく視聴して記憶している可能性が高いだろう最近十年以内の作品は意識的に外した。

1943『くもとちゅうりっぷ』
1983『聖戦士ダンバイン
1987『タッチ』
1988『聖闘士星矢 真紅の少年伝説』
1991『新世紀GPXサイバーフォーミュラ
1992『ジャイアントロボ THE ANIMATION ~地球が静止する日~』
1999『ToHeart
2003『はじめの一歩 TVスペシャル ~Champion Road~』
2005『ノエイン もうひとりの君へ』
2006『映画ドラえもん のび太の恐竜2006
2007『がくえんゆーとぴあ まなびストレート!
2010『REDLINE』

元のリストとあわせれば、わりと真面目に『機動戦士ガンダム』から『新世紀エヴァンゲリオン』へ進化する過程に『聖戦士ダンバイン』と『ジャイアントロボ』がある。リアルな都市のなかに異物のようなロボットが配置されるレイアウト、それによるロボットの巨大表現の進化。特殊な背景をつかった心象演出が、作中で実際に顕実している設定への変化もある。
また、スポーツにおける作戦の理屈づけの巧妙さ、スポーツに人生をささげて心身を削っていくドラマの深化という意味では、スポーツのジャンルこそ違えど『巨人の星』と『はじめの一歩』はけっこう比較しがいがあると思う。
青の6号』はビジュアルは当時最新でありつつ、根幹はけっこう古典的なアニメらしさがあり、意外と多くの作品と比較できるはず。『ホルスの大冒険』のように敵味方を超えたラブストーリーとしても読めるし、元リストでは『白蛇伝』『ガンバの冒険』くらいでとだえている動物擬人化アニメの流れで見ることもできるだろう。
他にジャンルを超えた関連性として、学園のなかから少女たちの革命を描いたアニメとして『少女革命ウテナ』から『まなびストレート!』。荒木作画の過剰さという文脈で『巨人の星』から『聖闘士星矢』へ。『マインドゲーム』と『REDLINE』のクライマックスシークエンスの類似、等。

*1:それゆえ、仕事としてまとまっていて完成度も高い『伝説巨神イデオン』はリストから外した。

*2:anond.hatelabo.jp

『夢王国と眠れる100人の王子様』雑多な感想

女性向けソーシャルゲームを2018年にTVアニメ化。ひいろゆきな監督、高橋ナツコシリーズ構成、まじろキャラクターデザインと、女性が中核をしめるスタッフワークが印象的だった。

異世界転生もしくは召喚ものだが、完全に主人公がノベルゲームの視点人物でしかなく、主体的な判断や選択をほとんどしない。現世からの転生が効果をあげていたのは、不思議の国が現代日本そっくりに見えて偽物だらけ、という局面くらいか。
基本的にマスコットに導かれるように二人の青年王子が自身の謎を解くように世界をわたっていく旅路が描かれる。恋愛や性的な要素がまったくといっていいほどなく、男性間にしても友愛や親愛や家族愛が基本で、ベタベタしない見やすさがあった。
作画は全体として低調だが、わりと作画枚数をつかってアクションしたり*1、背景美術にリソースをさいて異なる世界を1クールで複数見せてくれたのは良かった。静止画と顔アップがつづくだけのOPが意外と雰囲気出ていて好き。

*1:第3話に複数いる作画監督の一人が大城勉。

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第8話 ちゅるりん卒業!?おでかけ!おいしーなタウン

華満が新たなプリキュアとしてむかえられた。さっそく和実にさそわれ、芙羽もふくめた三人で街の食べ歩きをはじめるが、華満の顔はくもっていた。SNS活動の情報をブンドル団が悪用していたことが、華満を悩ませていたのだ……


絵コンテと演出がそれぞれふたり、作画監督が三人。東映アニメーションなのにスタッフが多い……昨年あたりからの画面クオリティを上げる体制変化をしているらしいが。
脚本の永井千晶はA-1pictures出身。シリーズどころか東映は初参加らしい。日常会話で和実が語った第三の選択肢の象徴「うどん」が、後半の戦闘で逆転の手段になるあたり、昔ながらの子供向け番組を意識したようなカルタプロット。たわんで攻撃を受け流す怪物を地面の割れ目に固定させる、その割れ目の多重円ぶりがうどんの姿に重なる無理やりな絵面に笑った。
そんなこんなでSNSに情報をあげることを迷うようになった華満に、ローズマリーが大人として危険性を認めつつ利用することを肯定する。5年前の『キラキラ☆プリキュアアラモード』でも映像をアップロードして商店街をPRする展開があったが*1、これくらいの教育的なバランスがこのシリーズにはちょうどいい。


ローズマリーがフィールド発生するところを拓海が目撃しながら今回はそこで出番が終わったり、よくある洗脳に苦しむようなそぶりを見せていたジェントルーの正体が生徒会長と明示されるところがオチだったり、さらに次回予告で別のブンドル団らしきキャラクターが登場していたりと、敵側の変化をうかがわせる物語でもあった。
プリキュアの加入と同じくゆっくりした変化という印象だが、本来なら半クールすぎたあたりで敵幹部の顔ぶれが変わるわけで、むしろスタッフの意図としては早めの変化だったのではないか、と想像する。もちろん今回のこの変化が放送延期によるシリーズ構成のやりなおしの結果という可能性もあるが。