法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

対象者があえて蔑称を自称的に用いることで表現の意味を変化させて蔑視に抗う事例のメモ

クイアとは - コトバンク

本来の語義は「奇妙な」で、かつては日本語の「変態」に近い否定的な意味で使われていたが、アメリカでは1980年代末ごろから、性的マイノリティがこの言葉を自らに対して肯定的に使い始めた。マイノリティが自分に投げつけられる侮蔑語を逆用して新たな意味に転じさせた注目すべき例である。

JAP(初回生産限定盤)(DVD付)

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『スター☆トゥインクルプリキュア』第10話 キラッキラ☆惑星クマリンへようこそ!

スターペンを探す星奈たちは、今度は惑星クマリンへ到着した。その宝石のような星の住人は、期待と異なる姿をしつつも、異星人の突然のたのみに協力してくれたが……


第8話*1と同じく、異星のスコシフシギな人々と異文化コミュニケーションをはかる寓話。
今回はクマさんといっても可愛らしい擬人化動物ではない。マスコットのように背こそ低くても、髭の濃い中年オヤジのようなデザイン。そして手足の多さはクマムシに似ていて、実際にクマリンの過酷な環境に耐えていく。その過酷な環境が植物などを宝石のように進化させたとも説明される。
デザインはキモカワイイといえそうなポップな異星人だが、初登場の印象よりもその地で生きる存在として考証されていて、そのギャップがSFらしさを実質以上に強く感じさせる。
ありきたりな宇宙人像を使わず、ちょっとした理科的な豆知識を延長して、オリジナリティの高い異星人を設定できている。そしてそれが主人公がプリキュアとして一方的に優越するのではない、対等な他者との関係性をむすぶドラマへと密接にむすびつく。


1クール目の終盤とはいえ、敵幹部が集結してプリキュアへ総攻撃をしかける展開で、必殺技を止められるレベルまで追いつめられるのもいい。
そこから撤退するために宇宙船で脱出したのも、今作ならではの結末だ。過去シリーズでも敵に支配された異世界へ様子見にいくエピソードがあったが、今作の移動手段は地球人にも隠したいものであり、それゆえ新たなピンチを予感させて次回へつづく。

『歴史秘話 マクロスヒストリア』

BSで3月に放映された番組の地上波放送。5月4日にBSで放映される番組のための、投票企画の途中経過を広報するため番組。
www.nhk.or.jp
歴史秘話ヒストリア』の枠組みそのままに、パロディのようにアニメ劇中史と、シリーズ各作品の発展を紹介していくところが楽しい。元ネタ番組がドキュメンタリーとしてはデフォルメが強すぎるので、むしろフィクションを題材にした今回には適合している。

メインスタッフや氷川竜介氏が登場して各作品の情報を手際よくまとめ、歌とメカと三角関係というシリーズに共通するモチーフにそって特色を紹介。番組MCが変形玩具をほとんどカットを割らずに変形させてみたあたり、きちんと番組スタッフがリハーサルしていることもうかがえる。
ただ、時代ごとに先端を目指していた歌とメカはともかく、三角関係についてはあまり大仰に紹介せず、わかりやすいメロドラマの型として利用したというくらいの位置づけにしたほうが良かったと思う。紹介されている描写だけでも陳腐だと感じたし、実際に各作品でもその収拾は投げ出しがちで、その枠組みには力点を置いていない物語ほど最終的には完成度が高かったように思う。

マッドハウスの制作進行がブラック企業ユニオンに参加したとの報

最初にツイートしている代表作は、生え抜きの監督によるものではなく、東映出身の監督による十年以上前の2作品だが、日テレとの関係の深さを象徴するタイトルでもある。



マッドハウスは日テレの子会社化もしているわけだが、ソニー傘下のアニプレックスが2005年に新興した制作会社A-1 Picturesも、2010年に制作進行が自殺して労災認定された。アニメ業界の外の大手企業の傘下になっても環境の改善ができないことは残念きわまりない。
しかし、業界全体が構造的に問題をかかえている時、問題が表面化するのは相対的にマシなところからという場合もある。あまりにも余裕がない労働者は、新たに労働組合に参加したり立ちあげたりすることが難しい。この事例も、良くも悪くもそうなのかもしれないという可能性を留意しておきたい。

『走れメロス』の結末をふりかえりながら妥当なビジュアル化を考える

太宰治 走れメロス|青空文庫

佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
 勇者は、ひどく赤面した。

つまり上記の描写を想定して、登場人物の姿を想像してみる。

走れメロス 新装版 (講談社青い鳥文庫 137-2)

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走れメロス/くもの糸 (10歳までに読みたい日本名作)

走れメロス/くもの糸 (10歳までに読みたい日本名作)

走れメロス 女生徒 (まんが日本の文学)

走れメロス 女生徒 (まんが日本の文学)

走れメロス 朗読CD付 (海王社文庫)

走れメロス 朗読CD付 (海王社文庫)

ならべてみると海王社文庫のガチムチっぷりが突出している……


実のところ、海王社文庫のみ高年齢女性向けに古典をパッケージングした作品のひとつであり、児童向けにアレンジした他と印象が異なるのは当然だったりする。
文章の印象をおぎなったり、異なる意味をつけくわえる挿絵の良し悪しは、パッケージのコンセプトと照合しながら評価すべきところだろう。


ちなみに私としては、おおすみ正秋監督*1によるアニメ映画が、独立した作品としても完璧だと考えている。

【映画チラシ】走れメロス

【映画チラシ】走れメロス

ずっとDVDかブルーレイで出してほしいと願っているのだが、いまだかなわない。数年後に『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』へ参加するような、そうそうたるアニメーターが参加した映像は、最新技術でリマスターする価値がある。
全体としてハードにアレンジされた物語も好ましい。特に、権力者が他人の献身ですぐ心変わりするような原作の甘さがなく、こまごまと時代の限界を描ききったところが良かった。

*1:TVアニメ『ルパン三世』第1期の前半を監督。