法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』祝! まる見え29周年 春のお笑い怪獣祭りミステリークイズSP

明石家さんまをゲストに呼んだ、恒例の2時間SP。しかも元号がきりかわるということで、ビートたけし所ジョージもふくめた3人の平成エピソードを年表をつくってまで総ざらい。


3人それぞれの俳優としての活動は興味深い。普段はNGを出さない田村正和がたまたまNGを出して、それを知らずに煽った明石家さんまが周囲に心配されたが、田村自身は鷹揚に許したエピソードなどは良かった。
しかし不祥事にも堂々と言及するのはいいといて、ビートたけし明石家さんまもドン引きするしかない行動が多すぎて、本当に性的な感覚は世代ごとで大きく変わるのだなと思うしかなかった……


「空から見たミステリー」は、文字通りに高空からの奇観を雑多に紹介。オーストラリアの巨大地上絵「マリーマン」なるものを初めて知ったが、なるほどgoogleMAPの航空写真で見るとスケール感が狂うほどの大きさにビックリする。番組では近所の亡くなった芸術家が作者という説を有力視していたが、第三者に発見されるまで知られなかったとすると、限りなくアウトサイダーアートに近いのかもしれない。検索してみると、BBC記事ではもう少し突っ込んだ情報がいくつかあるが*1、やはり正体は不明らしい。
「世界の摩訶不思議な事件簿」は、2009年に米国ワシントン州の海岸にうちあがった水鳥の死体群や、1999年にコロラド州で畜牛の死体が損壊していた謎、濃厚と牧畜で砂漠化したカルムイク共和国や、さらに北極圏にありながら砂漠化しつつあるロシアのショイナ村などを紹介。
水鳥の死体は赤潮プランクトンが出す粘液により、羽の油脂が洗い落とされて、水面に浮かべなくなったという真相。一種の天災に近いが、もしもプランクトンが海鳥の死体を食べるため定期的に粘液を出せるよう進化していたなら……などというSFじみた想像をした。
コロラド州の死体はいわゆるキャトルミューティレーションで、UFOが疑われたり、政府が狂牛病の極秘調査をおこなっていたという推測が語られるが、やはり猛禽などが食べた痕跡というのが真相だろう。
ショイナ村はクイズだったが、カルムイク共和国と同じく人災。底引き網をやりすぎて、海藻が失われてしまい、砂があがってきたというもの。私個人の仕事の関係で、共感せざるを得ない話題なのだが、さりとて私個人が何かできるわけでもなく。
他に1991年にアルプスで見つかったミイラ「アイスマン」の周辺で怪死が連続したり、現代のハイチでゾンビとされる人が存在する風景も紹介。しかし前者は発見から怪死まで何十年もかかっているし、数百人がかかわった発掘でそれくらいの死者が出てもおかしくはない。後者は、たしかに社会的にゾンビとされる人々がいる風景は興味深かったが、ゾンビを作る有名な食材をクイズにしてしまったため、あっさりゲストが解答してしまうというオチ。
「ネットで出会った彼の正体は??」は、いつものキャットフィッシュではなく、有名な結婚詐欺師の逸話。さまざまな女性に結婚をにおわせて、疑いがかけられそうになればMI6やCIAと称して偽の書類を用意したり偽電話をかけたり。クヒオ大佐を連想したが、それを知って真似したという感じでもなく、単に結婚詐欺師の手口は似ていくということなのか。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第9話 友情のリング!スタードーナツ☆

地球に帰還したプリキュアたちは、ひとまず日常生活に戻る。もともと親の期待を一身に受けながら生徒会長として奮闘していた香久矢まどかは、さらにプリキュア活動と両立するために疲弊していく……


冒頭から描線の強弱がついた作画で、上野ケン作画監督とすぐわかる。アバンタイトルではロケットが着陸するエフェクト作画も地味に良かった。
演出は前作の最終決戦を担当した若手の川崎弘二で、その時の印象*1と同じく冒険は少ないが手堅い作風。どうしても派手さを期待してしまう最終決戦より、今回のように地味な日常描写を重ねていくエピソードが持ち味に合っていると感じた。


今回の脚本は平見瞠。1990年版の『ジャングル大帝』でシリーズ構成をつとめたりして、児童向けアニメではベテランだが、どうやら『プリキュア』シリーズには初参加らしい。
ていねいな日常描写を地味に積み重ねていく展開は過去作にはない味わいだが、そもそも今作全体がかなり過去作から味つけを変えているので、担当脚本家の個性なのかどうか見当もつかない。
とりあえず、本筋がひたすら地味で鬱屈する一方なところを、古典的な金髪縦ロールな姫ノ城桜子を香久矢の後継者ねらいに配置したのは良かった。笑えるほど自己評価の高い言動で硬軟のメリハリがついて見やすくなったし、その髪型が怪物化した時に武器になるギャグも笑えた。香久矢を尊敬しているからこそ後継者になりたがるという立ち位置なので、この種のキャラクターには珍しく不快感もない。
同時に、姫ノ城という一般人の視点だからこそ、今作のポップな雰囲気から離れた展開にできたのだろう、とも思った。今作のプリキュアはたがいの自由を尊重して、執着しない。それは良いことなのだが、結果として香久矢の孤独を変えることなく、後継者を目指す姫ノ城が先んじて異変に気づくこととなった。
あと、敵幹部に場所が知られたからと、冒頭でロケットの着陸位置を変えたところも、地味に背景美術の手間をかけてまで整合性を気にしていて感心した。

『ガンダム誕生秘話』

NHKで3月30日に深夜放送されたドキュメンタリー。1979年の初代『機動戦士ガンダム』の制作準備から制作中にかけての記憶を、関係者の証言にそって構成する。
www.nhk.or.jp
直後に予告が流れたように、NHKで地上波放映がされる『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の宣伝をかねた番組なのだろう。
www.gundam-the-origin.net
かたちを変えたり危機がありながらも現在までシリーズがつづいている人気作品だけあって、さすがに過去から何度となく語られた情報が多いが、だからこそ後に衝突をくりかえした人々が穏やかな語り口で思い出を語っている姿に、現在に制作したドキュメンタリーならではの面白味を感じた。
特に、多忙な富野由悠季が入院中の安彦良和を毎週見舞いにきたという思い出や、富野が自作について基本的に好きと語る最後のコメントは、両者の確執や富野の自作嫌悪を何度となく聞いてきたファンこそ思うところがあったのでは。

『バーフバリ 伝説誕生』

大河を流れてきた謎の赤子が成長し、シヴドゥという立派な青年へと育ち、巨大な滝を見あげては乗りこえようと挑戦をつづけていた。
やがて試練を乗りこえたシヴドゥは、滝上から流れてきた仮面の主にたどりつく。そして自身の出自に秘められた陰謀を知ることに……


大ヒットした2部作の前編として、2015年に公開されたインド映画。すでに全長版も公開されているが、ミュージカルなどが削除されている短縮版を視聴した。

先に評価の高い後編を視聴していたが、やはり前編を先に視聴しておくべきだと感じた。
『バーフバリ2 王の凱旋』 - 法華狼の日記
ただし、ある一点だけは倫理的に納得しづらく、先に後編を見ておいて良かったとも思った。


後編は、因果が複雑にからみあう皮肉な政治劇から二世代にわたる復讐劇へと移行する。対してこの前編は、文字通りの古典的な貴種流離譚となっている。
もちろん、前編の物語がおもしろくないわけではない。シヴドゥ自身のドラマより父の因縁を語る回想劇が長いという構成のいびつさや、後編で真相を知ってもなお強烈な結末の引きなどの個性もある。回想の結末では偉大さを感じさせる国母が、映画冒頭では名も知られぬ屍になりはてている虚しさもある。
しかし主人公が試練を超えて情報をえていく展開は、良くも悪くもシンプルだ。父バーフバリとライバルのバラーラデーヴァの対決は熱いし、国母自身の子供はバラーラデーヴァという構図は面白いが、その決着は予定調和といっていい。後編へつながる最後の一言を除けば、素直にハッピーエンドの娯楽活劇として楽しめる。


もちろんただ楽しいだけでなく、さまざまな登場人物の行動や因縁が後編への布石として配置されている。
しかしそれよりも前編で重要と思ったのは、前半のイニシエーションで使われる巨大な滝と、後半の舞台となるマヒマシュティ王国。VFXとロケとセットを組みあわせた、映画らしい絵になる情景描写だ。
自由自在な長回しのカメラワークをもちいて、シヴドゥが超えるべき試練の高さと、故郷を離れて旅した苦労の大きさ、さらに政略が争われる王国の重みまでが、説明的な台詞をつかわずに実感的に描写された。
滝の巨大さが実感できるほどシヴドゥが追っ手から逃れられた説得力も増すし、王国の広大さがわかれば謀略をもちいてまで簒奪する動機に説得力が生まれる。もちろん現代的なVFX映画としての魅力も生んでいる。


そうして架空性の高いアクション史劇としては大いに楽しみ、命を救うことの大切さを正面から讃える物語も良かったのだが、ひとつ残念だったのはシヴドゥの女性に対する行動。
仮面の主との望まぬ戦いにさいして、勝手に腰巻をとったり化粧したりするのはいい。「バカ殿様」の芸者遊びのようではあるが、武器で傷つけるよりも相手を輝かせようとするのは、おせっかいに思わなくもないが相対的に平和でいい。
しかし、さすがに女性が寝ているところにこっそり近づいて、何度も勝手に刺青をほどこす*1のは、劇中の時代や文化を考慮してなお限りなく性犯罪に近いのではないだろうか……
後編の性犯罪への果断な対処描写*2を思うと、もし父バーフバリが息子の所業を知れば処刑してしまうのでは?……と思ってしまうほど首をかしげるしかない描写だった。

*1:水中で針をさすようにしていることから、顔料で消せる絵を塗っただけとも考えにくい。

*2:逆に考えると、ひょっとして前編のフォローとして後編に性犯罪への厳しい処罰を正義として描いたのかもしれない。

FGOの天野喜孝絵や、近年のSH@RP絵を見て、ちょっとガクゼンとした

b:id:kanose氏を経由して*1ソーシャルゲームのキャラクターを天野喜孝が描くという企画と、若いゲームファンからの不評について見聞きする。
www.aniplexplus.com

*1:アカウントは消されているが、kanose氏も不評に一定の同意をコメントしている。天野喜孝氏のFate絵、ちょっと手抜きに見える感はある - kanoseのコメント / はてなブックマーク

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