法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』驚きと謎がいっぱい! 大移動SP

「インドの移動映画館」は、半世紀で1000以上から10までに減ったという移動映画館のドキュメンタリー。型落ちしたフィルムを使って、田舎をまわって上映。いかにもインド的なイメージの屋外劇場だが、すでに現地でもすたれつつある風景というところが興味深い。ボランティアで映画上映をおこなおうとした主人公の挫折を描いた『UN-GO episode:0 因果論』を連想したが、それでもまだ映画を楽しもうとする観客はいるようだ。
「地中海の移民レスキュー」は、ボロ船で地中海をわたる難民を、必死で救助しようとするMOAS*1の活動を紹介。3年間で1万人を超える、荒海をわたる難民たち。彼らは古い船に過積載され、しばしば立ち往生する。
このドキュメンタリーで救助しようとしたところ、難民が海に落下したりしてしまい、死亡者が出てしまった光景が映しだされた。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第6話 闇のイマジネーション!?ダークペン出現!

宇宙船の修理がうまくいかずにストレスをためこんでいるララを見かねて、星奈は先輩ふたりといっしょに天文台へと連れていく。
修理を優先したくて星奈をふりきるように天文台を出ていこうとしたララだが、管理人に手伝いをたのまれて話をすることに……


シリーズ構成による連続脚本は前回で終わり、今回は特撮ドラマでの仕事が多い小林雄次脚本。過去の仕事では、『スマイルプリキュア!』第20話が透明設定をきちんと使いきったSF短編的なつくりで感心したことがある。
『スマイルプリキュア!』第20話 透明人間?みゆきとあかねがミエナクナ〜ル!? - 法華狼の日記
今回はなんといっても、単眼美少女科学者アイワーンと、擬人化猫執事バケニャーンの、コンビで性癖をこじらせた敵幹部デザインがインパクト絶大。

ヒトミ先生の保健室(1) (RYU COMICS)

ヒトミ先生の保健室(1) (RYU COMICS)

そんなアイワーンがプリキュアと同じアイテムを悪のために使用する導入から、このデザインのまま新プリキュアになるのだとしたら冒険だなと少し期待したが、最終的に主人公たちがアイテムを奪取して終わる。あくまでプリキュアのアイテム設定の重要度を印象づける、敵が悪用する展開を足しただけだった。
ただ期待こそ肩透かしされたものの、新たな敵の印象づけと、主人公側の進展を同時に展開するうまい話運びではあったと思う。また、アイワーンが自身の敗北について、研究として一定の成果があったと負け惜しみをいうあたりが、良い意味で科学者らしいキャラクターなのは良かった。


アクションでも今作初の一般人のモンスター化で、プリキュアがボロボロになる姿を見せて、強敵らしさをアピール。今作のポップなデザインだからこそ、戦闘で汚れた姿が映える。美馬健二作監らしい整った映像も、そのコントラストをきわだたせていた。
合体攻撃や囮作戦といったプリキュアの対抗策も、シンプルだがやつぎばやにくりだされることでテンポ良く、敵が対応できずに逆転できる説得力がある。

『クローズアップ現代+』どうなる?日本のマンガ・アニメ ~中国 急成長の衝撃~

急成長をつづける中国について、「国をあげた国産マンガ・アニメ振興策」に着目した作り。
どうなる?日本のマンガ・アニメ ~中国 急成長の衝撃~ - NHK クローズアップ現代+

これまでクール・ジャパンの象徴とされてきた日本のマンガ・アニメで異変が起きている。国民的マンガ雑誌の編集部には、中国人作家の作品が持ち込まれ、地上波でアニメ化される作品も。日本の優秀なアニメーターを厚待遇で募集する中国企業も出てきている。

しかし国策による支援ばかりでなく、日本の転換が遅れている側面は言及されていない。たとえばスマートフォン配信を前提とした縦スクロールのフルカラー漫画形式は、中国以外でも韓国で先行していた。
もちろん日本でもWEBサイトでの鑑賞に特化した漫画演出はさまざまに試されてきたが、それは実験的な挑戦にすぎないものばかり。チャット形式などを意識した作品が出回る小説市場に大きく遅れている。
また、文化の発展時によくある先行作品の模倣を、発展を遅れさせるような課題ととらえる意識も首をかしげる

ただ、課題もまだあります。中国では、アニメのキャラクターを模倣するなどして、著作権を侵害する行為が繰り返されていて問題となっています。こうした行為が、健全なアニメ産業の発展を妨げていると専門家は指摘しています。

日本のアニメをふりかえれば、『宇宙の戦士』のパワードスーツ*1が『機動戦士ガンダム』のモビルスーツの元ネタになったし、日本の時代劇を意識した『スターウォーズ』のライトサーベルから逆輸入するようにビームサーベルが生まれた。

その後もハリウッド映画を意識した作品はあまたある。そうした模倣のエネルギーをたもったまま、健全な市場によって行きすぎを抑制していくことが発展をうながすのではなかろうか。
中国では国産コンテンツ保護のため海外作品の上映が規制されているという問題があり、合作することで規制をすりぬけられるようになったことも紹介されている。

日本のアニメ会社が期待をする取り決めが、去年5月、日本と中国との間で交わされました。もともと中国では、海外映画の上映本数に制限があるため、日本作品の中国進出には壁がありました。しかし、日本と中国が共同で制作する「日中合作」の作品であれば、規制の対象外となったのです。

ただ、合作により規制をすりぬける前例として、日中戦争を題材とした2008年の映画『チルドレン・オブ・ホァンシー 遥かなる希望の道』が合作となった事例がある。

チルドレン・オブ・ホァンシー 遥かなる希望の道 [DVD]

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2018年のとりきめとは、それがアニメに拡大したということなのだろうか。


それはそれとして、巨大な市場が開拓されたことで、中国と日本の下請け関係が変わりつつある様子はやはり興味深い。

中国原作のアニメを、日本で制作。中国で公開しようとする動きも出ています。
去年6月、日本人とともに都内で事業を立ち上げた、鄧志巍さんです。手がけているアニメは、ほとんどが中国国内向けです。

豊富な資金源を期待できることから、立ち上げ直後から日本のアニメ業界では珍しいような補助をいくつもつけているようだ。

高い技術力を持った日本のクリエーターとともに制作しようと、採用活動を進めています。契約社員も多いアニメ業界で、正社員を募集しています。条件に応じて家賃を補助。残業の少ない環境を整備するなど、スタッフの待遇に力を入れています。


念のため、海外市場向けに好待遇のアニメ制作がおこなわれることは過去にもある。たとえば出崎統監督はすでに巨匠であった1980年代後半、いくつもの海外向け合作アニメを監督していた。
WEBアニメスタイル | アニメ様365日 第160回 大物監督達の海外合作作品

 東京ムービー新社の合作は、積極的に海外に進出するためのものだった。同社の海外進出は、成功したとは言いがたいが、非常に意欲的な試みであったし、日本のアニメ史について考える上で、避けて通るわけにいかない重要な事件だ。

 1980年代中盤から、東京ムービー新社以外のプロダクションでも、海外との合作が激増。アニメ界はちょっとした合作ブームを迎える。

テレコムアニメーションの海外向け下請けはつづき、2000年にも『バットマン・ザ・フューチャー 蘇ったジョーカー』*2という作品で作画全般と演出の一部を担当した。
『アニマトリックス』から始まるCM的な外伝短編の制作が流行した時期もあったし*3マッドハウスがアメコミヒーローのTVアニメ化をおこなう時期も近年あった。
今回の変化が印象的なのは、ついに日本が欧米だけでなく中国から“買われる”ようになったという時代の流れだ。

*1:デザインは日本のSFメカデザイナーの手によるもの。

*2:『バットマン・ザ・フューチャー 蘇ったジョーカー』 - 法華狼の日記

*3:最近も『ブレードランナー2049』の公開前宣伝で、前日譚のショートアニメがひとつ制作された。

『ドラえもん』タイムふろしき/ニセ宇宙人

映画宣伝企画の月面探Qは今回で終わり。終盤に映画の特別映像を長めに流して、微妙に本編が圧縮されてるかな。


「タイムふろしき」は、包んだ対象を古びさせたり新しくしたりする秘密道具で、古くなって調子の悪くなった家電製品を直す。のび太はそこから商売にすることを思いつくが……
リニューアル初期の2005年にアニメ化された短編を、2017年*1以来の金子伸吾コンテで再アニメ化。街のあちこちを移動することが多いエピソードだからか、ロングショットでPANするカットが目立った。
内容は原作に忠実だが、冒頭で故障しつつあるTVが薄型なので、野比母が叩いて直す印象的な描写は削られた。思えば地デジに強制移行してから8年くらいか。もちろん、買って数年で調子が悪くなることもよくあるらしいので、別に不自然な改変でもないのだが、ブラウン管が故障した原作や旧アニメから隔世の感がある。
ちなみに野比父は原作通りに一眼レフカメラを持ちだしていたことに対して、後半のスネ夫はデジカメで模型を撮影。ついでに予告を見ると次回はタイムふろしきを使うエピソードをアニメ化。


「ニセ宇宙人」は、のび太ジャイアンスネ夫にインチキUFO写真で騙されてしまう。そのしかえしに宇宙人のロボットを使って嘘つきを責め立てることにした……
2012年にアニメ化*2された短編を、当時は監督だった善聡一郎のコンテ演出で再アニメ化。放り投げられたUFO模型の滑らかな作画が目を引く。
時間経過の表現も良かった。おそらく清水東脚本の段階で決まっていると思うが、暮れゆく街でがていねいに描写され、迷走させられるジャイアンスネ夫の孤立感がよく表現されていた。ちょっとしたジュブナイルホラーのような雰囲気まである。
宇宙人のふりをして首相と会わせるよう要求する後半を大きくふくらませて、ジャイアンスネ夫は公衆電話で必死にたのむだけでなく*3、電車を使って国会議事堂に押しかける。国会に行けば総理大臣がいると考えるふたりだが、さて今の首相が国会にいる時間的な比率はどれくらいなものか……

*1:『ドラえもん』地球エレベーター/かたっぽ探知リード - 法華狼の日記

*2:『ドラえもん』ニセ宇宙人/ドロン葉 - 法華狼の日記

*3:ここでスネ夫がデジカメを持っていてもスマホを持っていないことがわかる。思えばスマホがあればそのカメラ機能で撮影できるか。

『スノーホワイト 名探偵三途川理と少女の鏡は千の目を持つ』森川智喜著

襟音ママエという少女が、探偵事務所をいとなんでいた。捜査も推理もせず、事務や広報は助手の小人に丸投げ。
しかも解決は魔法の鏡にたよっていた。あらゆる問いに回答して、必要であれば映像を見せるアイテムで、少女は一足飛びに真相をいいあてていく。
しかし出生の秘密にかかわる陰謀と、三途川理という名探偵の真意を指摘したことで、少女は困った事態に巻きこまれる……


デビュー作『キャットフード』*1に続くシリーズ2作目で、2014年度の本格ミステリ作家クラブ大賞を受けた*2
講談社BOX:森川智喜『キャットフード』『スノーホワイト』『踊る人形』|講談社BOX|講談社BOOK倶楽部
今回は連作短編形式で、襟音が鏡をつかって事件の謎を解いていく第一部と、襟音がつけねらわれる第二部にわかれる。
魔法の鏡という特殊条件がミステリの枠組みをゆがめていくのは当然として、第二部の展開は予想外の方向性だった。

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