法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』フェスティバルーン/ホカホカ雪で雪合戦

これまでの宇宙クイズは古くから有名な豆知識ばかりだったが、無重量状態で飲み物に空気を吹き込む実験映像は初めて見た。


「フェスティバルーン」は、さまざまなオリジナルの祭りを作りだす秘密道具が登場。それをドラえもんから借りたのび太は、雪祭りに行けなかったしずちゃんのため、公園に雪を降らせる……
高橋悠也脚本、大杉宜弘コンテのアニメオリジナルストーリー。秘密道具もまったくのオリジナルで、祭りを宣言するようなアドバルーンを上げて人々を催眠状態のように巻きこんでいく。
オリジナル祭りのバカバカしさを、トマト祭り牛追い祭りといった現実の奇祭を引くことで、ありうるリアリティを担保したところは良かった。しかし以降は思いつきのような祭りを作って楽しんで終えるという単調な構成のくりかえし。複数の祭りを同時に開催するカオスさも、別個の祭りが少人数で同時進行しているだけなので、ギャグとして成立するほどのメチャクチャさには感じない。
アニメオリジナル描写における出木杉の説得力のなさもあいかわらずだ。雪像の競作において、特に雪祭りの文脈があるわけでもないピサの斜塔を作る意味がわからないし、それで周囲が感心する理由もよくわからない。最後には勉強祭りを開催するわけだが、別に出木杉は単純に勉強が好きなキャラクターではない。祭りであれば、ちゃんとみんなで楽しめる計画を提案して巻きこめる能力がある、それゆえに「出来過ぎ」なのだ。


「ホカホカ雪で雪合戦」は、のび太が雪が降れば外で遊ぶといったため、天気を小さく再現する秘密道具が登場。それで寒い外へつれだすことに成功したドラえもんだが……
2012年にアニメ化*1された短編のリメイク。おおむね原作通りで、今回はちゃんと雪だけで作ったものはそれらしい色彩でデザイン。しずちゃんに氷の王冠をプレゼントするアニメオリジナル描写も気がきいている。原作からある「ホカホカ雪」を伏線として城を崩壊させ、そこでしずちゃんが帰ったことで「おんな雪」を降らせる原作展開に戻す展開も悪くない。
しかし中盤のジャイアンスネ夫との戦いで、2012年版と同じ大砲にくわえ、ガトリング砲まで雪で作ったのは疑問。もともと暖かい雪をふらせられる秘密道具ではあるし、オチから考えると自動的に動く雪が出てくることに設定の整合性はあるが、現実の雪ではありえないことと劇中人物に反応させてワンクッション入れてほしかった。

『相棒 Season17』第14話 そして妻が消えた

冠城の知人の犯罪学者から、妻が失踪したと連絡が入る。妻は元人気キャスターで、その引き上げで人気コメンテーターとなった夫を支える立場となっていた。
しかし残された血痕や、さまざまな傍証から、妻を殺した疑いが犯罪学者にふりかかり、やがて女性の死体が発見されることに……


根本ノンジ脚本。オーソドックスな偽装計画に見せて、それを反転させながら事件の様相を変転させていく。
ミステリ的な面白味はそれなりにあったのだが、妻と妹の関係性やら、元人気キャスターを助ける女性などで、何もかも「女は怖い」にまとめて終わったのは残念。
元人気キャスターだった妻の尊厳を軽視していたことや、妹が意図的に誘惑したとはいえ浮気したことで、ちくりと犯罪学者も批判されて良かったろうに。冤罪で拘留され社会的な評価も下がるという罰がくだされているという解釈はできるのだが。

毎月勤労統計に一喜一憂しない安倍晋三氏の答弁ビフォーアフター

不正が明らかにされている毎月勤労統計が、当時の安倍氏の発言にそって変化していたという立憲民主党小川淳也氏に対して、下記のように安倍氏が答弁したという。
毎勤統計で一喜一憂してない、実態は総雇用者所得みるべき=安倍首相 | ロイター

「いちいち毎勤統計について報告を受けてない。基本的に毎勤統計について一喜一憂する考えはない」とし、経済実態を示しているかどうかは「総雇用者所得でみるべきとの議論をいつもしていた」と語った。

さて、ロイターが報じている上記の発言について簡単に調べたところ、あっさり2014年の参議院議事録が見つかった。
参議院会議録情報 第186回国会 予算委員会 第13号

野田国義君 二月十七日の衆議院予算委員会で、安倍総理は我が党の山井委員の質問に対して、平均賃金が名目で若干のプラスにとどまると答弁をされました。しかし、厚生省からの翌日発表された確定値ではマイナスであった。給与は三年連続して減少しているという事実であります。
 生活実感に最も近いのは、実質の値ではなくて名目の値であります。いわゆる現金の給与額が、名目の賃金が三年連続して減少しているということでありますけれども、これはどういうことでしょうか、御説明をお願いしたいと思います。

現在は立憲民主党野田国義氏が、確定値の低下を指摘。対する安倍氏は速報値が上がったという過去答弁の根拠の正しさだけを主張し、確定値が下がりつづけている問題には答えなかった。

内閣総理大臣安倍晋三君) よろしいでしょうか。よろしいでしょうか。
 二月十七日の予算委員会で私が勤労者一人当たりの平均賃金が名目で若干のプラスと申し上げたのは、平成二十五年後半、七月から、十八日のことであります。それは前後の関係から見れば明らかなことでありますが、具体的には、二月五日に公表されました毎月勤労統計調査の速報値に基づきまして、一般労働者一人当たりの賃金は、昨年後半はプラス〇・八%、パート労働者の時給についても昨年後半はプラス〇・七%であります。他方、相対的に賃金の低いパート労働者の割合が上昇しているため、勤労者一人当たりの平均賃金は若干のプラスにとどまっているとお答えしたものでありまして、これはその後の二月十八日に公表された速報値においても傾向は同じでありまして、私の答弁は、首を振っておられますが、これはまさに事実ですよ。この事実が違うんですか。(発言する者あり)事実ですよ、これは。何が違うのか言ってもらいたいと思いますよ。

答弁の内容を見てのとおり、そもそもの2014年2月17日における安倍氏の答弁が、毎月勤労統計調査にもとづいていた。確定値を待たずに数字が良かった速報値を根拠にしたあたり、一憂はしなくても一喜はしていたわけだ。
そして実際の数字がどうかという野田氏の批判に対しては、速報が出たことは事実だからと過去の自説の正しさを主張するのみ。その自説が自政権の正しさを裏づける根拠になっているか否かには答えなかった。

『世界まる見え!テレビ特捜部』ピンチからの一発逆転! 大脱出SP

「暴れ象 タイク」は、ハワイのホノルルにやってきたサーカス団から象が脱出。動物プロダクションで調教された象タイクは、ふだんは鎖につながれ自由に動けず、調教においてよく殴られていた。そして引き渡されたサーカスで、不慣れな象使いにより暴走し、街を破壊しながら逃げることに。タイクは80発の銃弾を浴びせられ射殺。ベテランの象使いも死亡。
この事件があったのは1994年で、私にとってはつい最近の印象だが、ここから世界20ヶ国以上で動物に曲芸をさせることが禁じられていったという。リアルタイムを生きていたが、そういう印象はなかった。
「大海原での座礁から脱出」は、ヨットで世界一周旅行をしていた6人家族の事件。自動操縦にしていたところサンゴ礁座礁し、船内に水が流入。衛星電話をかけようとしたところ、手が滑って水に落として壊すという驚くほどの凡ミスから、全員が追いつめられていく。海面に岩場が顔を出していたのを見つけたので、マストに足をはさまれた父を葛藤しつつ置きざりにし、それでも一夜明けて全員がなんとか生きのびたという。
麻薬王エル・チャポの脱獄」は、2015年にメキシコのアルティプラーノ刑務所で起きた大脱獄事件の紹介。エルチャポという愛称で知られていたホアキン・グスマンという男が、メキシコから米国への麻薬密輸で資産家となっていた。しかし個室に収監され、24時間をカメラで監視されるなか、個室内のトイレに入ったグスマンが出てこなくなった。調べてみると1.6kmもの長いトンネルが手作業で掘られていて、そこにしいたレールの上をエルチャポは改造バイクで姿勢を低くして逃げていったことがわかる。
もともとトンネルを使って麻薬を密輸していたエルチャポは、部下に助けられて逃亡。そこで警察は以前に確保していた携帯電話から、エルチャポが懇意だった有名女優ケイト・デル・カスティーリョを見張ることに。さらに俳優で映画監督のショーン・ペンが映画制作でエルチャポに接触するのを利用して、隠れ家を発見。後日に隠れ家に踏みこみ、銃撃戦を展開。エルチャポはまたもトンネルで逃げたが、車を奪おうとして地元警官によって逮捕。しかし警官たちは作戦を知らず、エルチャポが示した賄賂に迷っていたところに、メキシコ海軍がふみこんで再逮捕……という劇的かつ味わい深い幕切れ。
まるで映画のような派手な事件だと思っていたら、途中から本当に有名な映画関係者がかかわってきて驚いた*1。日本におけるヤクザと芸能の関係を思わせるところもあるし、エルチャポも庶民の一部から人気を集めたりしているらしい。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第1話 キラやば~☆宇宙に輝くキュアスター誕生!

夜空を見ながらオリジナル星座を考えていた星奈ひかる。そこに謎の妖精がやってきた。
翌日、妖精フワを追いかけた星奈の前に、謎のロケットが降りてきて、なかから現れた少女がゲロを吐いた……


今作の高橋晃キャラクターデザインは、最近よく『アイカツ』で仕事をしているためか、以前よりポップ。パステルカラーの色指定もカラフルで、強弱のついた描線も漆黒ではなく、画面が軽やかだ。
これまでのシリーズが良くも悪くも個性として持っていた泥臭さを感じさせない。初回から上野ケン作画監督をはじめ、この枠の主力となるアニメーターが総勢で参加しているおかげもあるだろう。


物語も、気軽なコメディタッチで、頭の軽い主人公がさまざまな壁を軽やかに飛びこえていく。メッセージを語らず、ドラマチックな葛藤をつくらず、これが自然なのだと前向きに見せていく。
それでキャラクターに身体性を感じさせるとっかかりがないかというと、よりによって最もフィクショナルな存在に嘔吐させるギャグのインパクトで笑わせ、片足を地につけなおす展開がうまい。
宇宙を題材にしているという情報からの先入観とは異なり、かなりファンタジックで架空性の高い宇宙描写が始まるが、本来なら呼吸ができないことを説明する台詞があったり、敵が移動する時はロケット噴射したりして、現実との距離感をコントロールしている。
異星人をカッパになぞらえるオカルト定番の発想を、イケメン敵幹部に組みあわせたギャグも楽しい。


そして今後に活躍するだろうキャラクターをチラ見せしつつ、今回に出会う星奈とララにメインキャラクターをしぼり、プリキュアの初変身からアクションまできっちり1話におさめた。
女児向け販促アニメの第1話としてほぼ完璧な構成で、この作品でしかありえないオリジナリティも感じさせる。宮元宏彰シリーズディレクターがシリーズ初参加した『キラキラ☆プリキュアアラモード』とはまた違って、シリーズに新たな風を吹きこんでくれることを期待したい。